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映画「LBJ ケネディの意思を継いだ男」を観る

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 FDR=フランクリン・デラノ・ルーズベルト、JFK=ジョン・フィッツジェラルド・ケネディ。じゃあ「LBJ」ってだーれだ。「ちょっと何言ってんのかわかんない」じゃなくて…、本作の主人公リンドン・ベインズ・ジョンソン大統領!! まあ日本でこの人の名が、市井の人々の口の端に上ることはほとんどないだろう。知っていることといえば、せいぜいケネディの暗殺を受けて、急遽大統領になった人、あとはベトナム戦争泥沼化の張本人、てなもんか。だが、米国における好きな歴代大統領45人のランキングで、ジョンソンは必ず上位4分の1に入るのだそうだ(小西克哉・本作のパンフレットより)。

 

 1960年の大統領予備選挙において、上院院内総務としてワシントンでもっとも力のある民主党員といわれた南部テキサス州選出のリンドン・B・ジョンソン(ウディ・ハレルソン)は、若さと清新さに優る東部マサチューセッツ州選出のジョン・F・ケネディ(ジェフリー・ドノヴァン)に敗北。だが、ケネディはジョンソンを副大統領候補に指名。思い悩んだ挙句、ジョンソンはそれを受け入れる。そして同年11月の大統領選において、共和党のニクソンを退けたケネディは第35第米国大統領となった。

 

 ケネディ政権でのジョンソンの立場は、若いハーバード出身のスタッフに囲まれながら、もともと公民権法に反対ということもあり、かなり浮き上がっていた。なおかつ、副大統領指名当初から、JFKの弟で司法長官に抜擢されたロバート(マイケル・スタール=デヴィッド)には一方的に毛嫌いされる始末。そして大統領からは公民権法に強硬に反対している南部の民主党議員に対する懐柔役を命じられ、事実上、国政の中枢から遠ざけられてしまう。名を捨てて実を取ったつもりの副大統領就任だったが、それが裏目に出るかたちとなり、失意を隠せないジョンソン。

 

 だが、そんな状況が一変する。1963年11月22日、テキサス州ダラスでパレード中のケネディ大統領が凶弾に倒れたのだ。思わぬかたちで大統領の地位が転がり込んだジョンソン。大統領死亡の報に狼狽しつつも、決然として立ち、ケネディの棺を乗せてワシントンに向かうエアフォースワンの中で、ロバートの反対を押し切って、大統領の就任宣誓式を行うのだった。

 

 ジョンソンの人となりを評すれば、口が悪く、下品で、高圧的な態度、ケネディとは対極をなす野暮ったいおっさんとなろうか。他方、自宅では自己嫌悪的であってみたり、夫人には頭が上がらないという別の素顔も描かれる。ただ、日本ではケネディの影に隠れて存在感が薄いが、「偉大な社会」をスローガンに掲げ、健康医療保険、貧困対策、環境規制などなど、「1964年から1965年にかけてジョンソンが連邦議会を動かして行った社会改革は、量においてもその内容においても1933年のルーズベルト大統領の業績に匹敵するほど目覚ましいものであった」(ウィキペディアより)。64年11月の大統領選においては、共和党のバリー・ゴールドウオーターを地滑り的勝利で下し、大統領に再任されている。

 

 何より本作がフォーカスするのは、ケネディの遺志を継いだ公民権法の成立である。当時のアメリカは公民権運動が最盛期であり、63年の8月に人種差別反対ワシントン大行進に20万人が参加し、キング牧師による有名は「わたしには夢がある」の演説が行われている。もっともこの45年後に黒人大統領が出現するなど夢想だにできなかったのも事実。無論反対運動もすさまじく、特に南部の民主党保守派は強硬に反対していたが、その急先鋒であり、ジョンソンの政治の師でもあったジョージ・ラッセル上院議員をいかに説得するのか、ジョンソンという政治家の真骨頂を見るであろう。


「沖縄、台湾、そのはざまの尖閣ー中国の覇権・侵略を阻止せよ」ー集会開催

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 10月27日に、都内で「沖縄、台湾、そのはざまの尖閣―中国の覇権・侵略を阻止せよ」集会が開催されました。メインは宮崎正弘氏(評論家)、仲村覚氏(日本沖縄政策研究センター理事長)、王理明氏(台湾独立建国聯盟日本本部委員長)、藤井厳喜氏(国際政治学者)の講演。なお講演に先立ち、この前日に結成された中国の少数民族弾圧や覇権主義に対抗する国際連帯組織、自由インド太平洋連盟の各国代表と米国から来日した満州亡命政府の3人の代表者が紹介された。

 

 集会は最後に、

  一、中国の覇権主義と侵略、そして人権弾圧と戦い続ける。 

  一、日本民族の分断を招く、国連先住民族勧告の撤回をオールジャパンで取り組んで実現させる。

の二つを決議し、閉会した。以下は各講演者の講演要旨。

 

ラビア・カーディル氏(自由インド太平洋連盟会長)

 

 

 

宮崎正弘氏(実行委員会代表)

 

 今現在、安倍首相は北京に飛んでニコニコ笑顔を振りまいている最中。まずわが同盟国であるアメリカの動向を先に捉える必要がある。トランプ氏が仕掛けている米中貿易戦争、これは大英断だ。ケント・ギルバート氏も近著でそう述べている。衆知のように、中国は米国から知的財産権の盗用、強制的な特許権の移転等々、経済侵略を仕掛けている。さる10月4日にペンス副大統領が演説した中に出てくるが、トランプ政権の狙いは、中国の野心を潰すことだ。具体的には、「メイドインチャイナ2025」、すなわち、2025年までに中国が経済的覇権を握るということ。これにたいしてトランプ政権は、ヘゲモニーは中国に絶対渡さないと、そしてやれるうちにやってしまおうというのが今の状況。

 

 今現在の米中貿易戦争は、関税の掛け合いをやっている。ただ、これは序の口で、次にくるのが、金融戦争。これは中国経済に相当なインパクトがあるだろう。その次に控えるのが、通貨戦争。これらを米国は徐々に仕掛けていくだろうと思われるが、それに対して中国は今、後ずさりしている、というより困り果てている。困ったときには手のひらを返して、ニコニコと日本にすり寄ってきているというのが今の中国の態度。日本のメディアは貿易不均衡の問題だとして騒いでいるが、これは前述のように、米中戦争の序の口であって、やっと戦いの火ぶたが切られた段階だと認識したらよい。

 

 ここで古い歴史を取り上げたい。紀元前のペロポネソス戦争とポエニ戦争だ。前者はスパルタとアテネとの戦いで、56年もかかって両者とも力尽きた時に新しい大国、アレキサンダー率いるマケドニアが出てきた。ポエニ戦争はローマとカルタゴの戦い。これは3回で118年かかっている。最後に、非武装国家であるカルタゴはボロボロに負けて殲滅されてしまったという結末。

 

 今般のアメリカの決議は、トランプ個人の考えではない。中国に対する厳しい態度はトランプ政権よりも議会の方が強い。議会でも共和党より民主党の方が過激なことを言っている。それに輪を掛けて、アメリカのメディア、日ごろはトランプをたたいているニューヨークタイムズやワシントンポストもその他も中国に対して厳しい視線を送っている。つまりこれはアメリカ国内にコンセンサスが生まれたのだ。日本のメディアは楽観的だが、推測するに、短くて50年、長ければ100年くらい掛かって決着がつくだろう。これは日本以外の国はわかっている。

 

 マレーシアでマハティールショックがあった。これは中国べったりだった前ナジブ政権があまりに癒着や汚職が絶えないことに国民がノーを突き付けた。つまり中国ノーと言ったのだ。これが次にパキスタンに波及した。パキスタンと中国は50年来の軍事同盟で仲良しのはずが、中国からこれ以上お金を借りるのはやめようと言っていた、まさかのクリケットのチャンピオン、イムラン・カーンという人が首相に当選した。次はモルディブだ。やっぱり中国べったりのヤミーンという大統領がいたが、中国が相当肩入れしたにも関わらず、負けた。反中国を掲げた無名のソリという候補だ。つまりアジアにおいて、反中国ドミノが起きている。この動きはこれからネパールや中国国内のウイグル、南モンゴル、旧満州…などに波及していく可能性。「協調から競合へ」とトランプが言っているのに、安倍首相は「競合から協調へ」と言っている。これに対してアメリカが今後どういう反応を示すだろうか。本日の米大手紙の社説は穏やかなものだが、日中の親密化を米国は非常に危惧しているという状況だろう。

 


仲村覚氏

 

「誰が沖縄県民を先住民族にしたのか」

  仲村覚氏(日本沖縄政策研究センター理事長)
 

 今年4~5月に配信された中国のニュース番組は以下のように報道していた(要約)。

<琉球民衆は今、日本からの独立を固く決意している。実際、琉球が日本の領土に組み込まれた時、琉球民衆は強烈な抵抗をした。第二次大戦中、日本は壮絶な戦闘を行い、琉球は戦時中、日本の犠牲になったのである。そしてその数字は戦後公開されたものよりはるかに多かった。長い間琉球はずっと日本政府と闘争してきた。またこの歴史をさらに多くの人に知らせようとしてきた。しかし、島上での実力においては、琉球は常に独立することはできなかったのである。いま、日本政府の再三の不祥事、各種情勢の不振のもと、琉球では再度独立の嵐が起きている。今回の非難の対象は、安倍その人である。結局何といっても、この日本のすることなすことが、琉球で独立が叫ばれる主要な原因となっている。憲法改正、スキャンダルなど安倍は琉球民衆の攻撃の的である。琉球の独立の嵐に対し、日本側は声明を出した。その中で武力を使っての解決方式を採用する可能性がある。これは日本にとっては普通のことである。しかし日本にある現在の外交危機と国内の矛盾という二つのプレッシャーの下、日本政府はそのような過激な行為は行えないであろう。日本にとってはそれは自滅を招くような方法である>
 

 中国は、沖縄を憲法改正阻止の基地にしようとしているのが読み取れる。知事選の結果はこのシナリオに一歩近づいたといえる。中国による沖縄への工作はいつからあったのか。それは終戦直後から始まっていたのだ。それを象徴する1960年代の中国の切手がある。そこには「中日両国人民は団結して共通の敵である米帝国主義に反対をしよう」とある。当時の中国の統一戦線は日本に伸びていた。これが70年安保闘争だ。切手の中央には男性二人が並んで勝どきをあげる様子が描かれているが、そのうちの一人が掛けている襷には、日本語で「沖縄をかえせ!」とある。1960年4月28日、沖縄県祖国復帰協議会が発足したが、その背後には中共の手があったということ。沖縄復帰と言えば、誰も反対できない。日の丸を振ろうといえば誰も反対できない。だが、その目的はベトナム戦争の真っ最中に沖縄復帰をさせて、日米安保破棄の目論見があったということだ。1964年の中国共産党新聞1月27日付には、毛沢東の言葉として以下記載されている。「中国人民は固く日本人民の偉大なる愛国闘争を支持する」「日本の領土沖縄の返還要求、日米”安全保障条約”の廃止、等々。すべてこれらは日本人民の意思と願望を反映している。中国人民は心から日本の正義の戦いを支援します」。毛沢東は明確に、”日本の領土、沖縄”と言っている。わが外務省はこの資料をもとに、中国に反論すべきだ。
 

 中国の工作は、沖縄の復帰前は復帰をさせて日米安保を破棄させる。復帰後は、沖縄を独立させて同じく日米安保を破棄を狙っている。このことをよく理解すべきだ。この8月にジュネーブの国連人種差別撤廃委員会に行ってきた。対日審査の前に対中審査もあって、ウイグル、南モンゴルの人権状況に関して委員会は中国非難をした。しかし実は日本も非難されている。琉球民族(沖縄県民)は先住民族にもかかわらず、何度勧告を出しても日本政府はそれを認めないと。私は、そうではなく、沖縄県民は日本人だということをわざわざ言いに行ったのだ。これと前後して、参議院議員であり、社会大衆党の委員長である糸数慶子氏がスピーチした。琉球新報によれば、「沖縄の人々に対する差別の事例として、米軍普天間飛行場の移設に名護市辺野古の新基地建設をはじめとする基地問題をあげ、日本政府に差別的な政策を止めさせ、先住民族としての権利を守らせるよう訴えた」そうだ。私のスピーチの冒頭部分はこうだ。「私は沖縄で生まれ育った者ですが、沖縄で生まれたすべての人々は日本人として生まれ、日本語で会話をし、日本語で勉強し、日本語で仕事をしてきた。ゆめゆめ日本の少数民族などと意識したことはありません。沖縄は第二次大戦後、米軍の占領支配下におかれましたが、沖縄では激しい祖国日本への復帰運動が起こり、わずか27年後には、日本に返還されました。祖国復帰運動の最大の情熱の根源は、沖縄の子供たちに日本人としての教育を施したいということでした」。
 

 これまで、人権差別撤廃委員会から4回の対日勧告が出されているが、当の沖縄の人たちはそのことを知らない。私が沖縄の議員に説明しても理解するのに1年かかる。琉球新報8月31日付には、「国連人種差別撤廃委員会は30日、対日審査の総括所見を発表した。日本政府に対し、沖縄の人々は、『先住民族』だとして、その権利を保護するように勧告をした」とあった。私の必死の訴えにもかかわらずまた勧告が出てしまった。委員らの認識はこうだろう。仲村覚は琉球人だけれども、日本政府が1879年琉球を滅ぼし、占領して以来、皇民化教育により、言語も奪われ、アイデンティティも破壊され、同化政策を進めた結果、一部琉球人でも自分を日本人だと思い込んでいる人もいると。そんな可哀想な琉球人だと判断したのだ。
 

 立憲民主党の枝野幸雄党首は、同党沖縄県連立ち上げの際に、日米安保堅持と言っている。立民の沖縄県連会長は有田芳生氏だ。有田氏は糸数氏と仲がいい。ジュネーブで見た時、いつもとなりに座っていた。有田氏はヘイトスピーチ反対、糸数氏は沖縄県民の先住民族運動。二人の共通項は、反差別運動。これは日米安保は堅持するが、全国の7割を占める沖縄の米軍専用基地は差別じゃないか、オスプレイの強硬配備は差別じゃないか。辺野古の新基地建設は差別じゃないかと。左翼の戦略は反安保闘争から反差別闘争に変わったのだ。このロジックは、沖縄の保守をも囲い込む統一戦線といえる。これを論破する理論武装が必要。沖縄県は辺野古の埋め立て承認を撤回したが、裁判では必ず負ける。だが彼らは負けても構わない。負けたらまた差別されたと国連に行くのだ。政府への抵抗は国連に行く材料を作っているだけとも言える。辺野古移設の賛否を問う県民投票を来年の4月までに行うことが決まった。これに対して、石垣市は反対の意見書を可決。その他のいくつかの市町村も反対している。自民県連は県議会では議席が少ないために可決を許したが、他の市町村でボイコットして阻止を目論む。だが私が推測するに歯抜けになろうが、彼らは5億5千万の税金を使ってやるだろう。やってまた国連に行くだろう。
 

 誰が沖縄県人を先住民族にしたか。それは部落解放同盟に行きつく。IMADR(反差別国際運動)という団体がある。その所在は部落解放同盟の中央本部と同じだ。このホームページにはこうある。「日本にも人種差別があります。その影響を受けているのは、部落、アイヌ、琉球・沖縄の人びと、日本の旧植民地出身者とその子孫、そして外国人・移住労働者です」と。沖縄県民は全く与り知らぬことだ。彼らが人種差別NGOネットワークという組織を使って、国連に「沖縄県民は先住民族だ」として訴えに行っている。人種差別NGOネットワークの加盟団体には、やたら韓国や北朝鮮系の団体や同和問題の組織の名前が多い。その中の沖縄の団体名をみると、4つの団体があるが、沖縄の人に聞いても誰も知らない。にもかかわらず、彼らが勝手に沖縄を代表して国連に行って私たちは先住民族ですと10年、20年言い続けた結果、国連委員は騙されたのだ。IMADRの代表理事は武者小路公秀氏(国連大学元副学長)。武者小路氏は北朝鮮で一番信頼されている日本人だそうだ。彼らが沖縄県民を先住民族にしようという目的は、先住民族の権利には土地の権利がある。その権利でもって米軍基地を追い払おうということだ。

 

 沖縄の重要な歴史が二つある。沖縄戦と祖国復帰だ。この二つは沖縄県民だけの歴史ではなく、日本国民全体の歴史だ。沖縄戦は沖縄県民だけが戦ったわけではない。47都道府県から沖縄戦に参戦しているのだ。そして沖縄県外出身者が6万人以上亡くなっている。戦後沖縄は占領されたが、実はそれで日本は分断国家にならずにすんだ。米軍の第一次本土上陸作戦は九州南部から、第二次作戦は関東地方からだった。しかし沖縄でのダメージがあまりに大きく、それを諦めたのだ。米軍に占領された沖縄が、戦争も経ずにたかだか足掛け27年、講和条約から20年で祖国復帰できたというのは、人類史上まれにみる奇跡と言える。これは1000年、2000年語り継いでいくべき偉大な歴史だ。ここで重要なのは誰がどのような思いで、どのような情熱をもって活動して復帰が実現したのかということ。この史実が封印されてしまっている。それは何を隠そう、沖縄のリーダーが沖縄の子供たちに日本人としての教育を施したいという思いだったのだ。その代表が屋良朝苗氏(初代沖縄県知事)だった。

 

王理明氏


「米中対決と台湾の進むべき道」

  王理明氏(台湾独立建国聯盟日本本部委員長)
 

 1960年に台湾青年社が創立された。創立者は、王育徳(王氏の父)、留学生だった黄昭堂、廖春栄、蔡季霖、黄永純、傅金泉ら。10年後には台湾独立聯盟となった。本部をアメリカにおき、米議会に働きかけながら、台湾人の状況を世界に訴え続けてきた。今現在の台湾は自由で平和と思うかもしれないが、戦後、中国国民党が入ってきて台湾を植民地にした。台湾人は言論の自由、行動の自由などすべてを奪われて戒厳令の中で非常に苦労したのだ。国内でちょっとでも反政府的な言動をすれば、否、その兆候を見受ければ、捕まえて虐殺するなどということが行われた。1947年の2・28事件では、3万人の有望な台湾人が虐殺された。よって彼らは海外で活動する以外なくなったのだ。金美齢氏や駐日大使までやった羅福全氏や許世楷氏、そして黄文雄氏という方々が、命を賭け、私利私欲を捨て、自分の人生は台湾に住む台湾人のために捧げるということを決意して、活動してきたのが台湾独立運動だ。
 

 では台湾とは、台湾人とは何か。台湾は元々中国の一部ではない。台湾と中国はずっと別々の歴史を歩んできた。今、中国は台湾が自分の領土の一部と声高に言っているが、中国人は昔、台湾を見たこともなかったのだ。地図上ではすぐそばにあるように見えるが、台湾海峡はドーバー海峡の4倍の長さがあり、海流も激しい。中国人は昔は航海技術もなく、そもそも水を怖がる民族であり、海の向こうの台湾に興味も関心もなかったのだ。むしろ中国の歴代王朝は、四方から攻めて来る異民族との戦いを繰り返し、漢民族の王朝になったり、ツングース王朝になったり、モンゴル王朝になったりしてきた。ともかく、台湾とは縁もゆかりもないというのが実情だ。それでは台湾自身はどうだったかといえば、統一国家のない、無主の島だった。原住民が5000~1万年前から住んでいて、それぞれのテリトリーで、それぞれの言語を持ち、それぞれの文化で暮らしていた。

 

 大航海時代になってオランダやポルトガルやスペインが統治するようになったが、それは全島に及ぶものではなかった。だいたい台南のあたりまでだ。初めて中国王朝と台湾が結びつきをもったのが、清朝の時代。台湾に清国の役所が置かれた。といっても全土に行政機構が網羅されたわけでなく、インフラ等積極的な開発は行われず、他国に占領されるのを防ぐためだったのだ。日清戦争後統治した日本によって、全島津々浦々に初めて行政機構が網羅された。台湾人が共通の言葉をしゃべれるようになったのは、日本時代。日本語によってだ。この時はじめて近代国家や法治国家の何たるかを身に着けることができた。こういう歴史的経緯からして、戦後日本が台湾を放棄したとはいえ、中華民国や中華人民共和国に返還されるというのは筋が通らない。戦後どの国でも民族自決の原則にのっとって独立した。アフリカも中南米もだ。でもなぜか台湾人の意見だけは誰も聞いてくれなかった。だからしょうがなく、海外に出た台湾人が台湾独立運動を行って、中華民国=中国国民党による一党独裁国家からの独立を目指したのだ。
 

 今現在の台湾の状況は、民主進歩党(民進党)の蔡英文氏が総統。国会も民進党議員が過半数を占めている。民進党とは、一党独裁国家に対抗して、1986年に発足した台湾人による政党。もう一つの政党である国民党は、正式名が中国国民党。蒋介石が中国からやってきて、台湾を支配した時の党の名前のまま。一度中国人に占領された国がどうなるかということを想起すれば、そこから民主主義を作り直すとか、別の政党をつくるとか言論の自由を取り戻すとか、これは本当に大変なこと。民進党が作られたのは、海外の活動家の働きかけによって米議会が動かされ、蒋政権に影響を与えた結果。戒厳令も解除され、台湾人を要職につけるべきだということで、蒋経国のときに李登輝氏を副総統に就けた。その後、蒋経国の急死によって李登輝氏が総統となり、国民党の主席という立場を使って、国民党の中から一党独裁を排除し、民主主義体制を敷いた。

 

 李登輝氏は1961年、私の父が自宅を事務所にして独立運動をやっていた時期にひそかに来たことがある。残されている日記には、父が李登輝氏と台湾の将来について語り合い、意気投合したとある。二人はともに台北高等学校出身で、日本教育を受けた世代。どうやったら自分たちの台湾を取り戻せるか、これを忍耐強く知恵を使って辛抱強くやり続けた結果、今台湾は民主的な制度を持つ国へと生まれ変わった。2016年の選挙で大多数の国民によって、蔡英文総統はじめ立法院の議員も選ばれた。しかし今蔡英文氏の人気が落ちていると言われる。支持率は20%台。日本でも大丈夫かという声を聞く。

 

 10月20日に台北で大規模なデモがあった。喜楽島聯盟という独立派が集まって作った団体が主催したのだ。喜楽島とは台湾の別名で、この中には李登輝氏(元総統)、陳水扁氏(元総統)、彭明敏氏(元総統府資政)などが参加している。彼らはデモで何を要求したか。台湾独立の是非を問う国民投票を実施して欲しい。そして「台湾」の名でオリンピックに出場できるように欲しいと蔡英文政権に対して抗議活動した。主催者発表で12万人が集まった。欧米メディアの報道は、「台湾独立派が声を上げた」と書いている。産経の報道は、「独立派と蔡英文政権とに溝」との趣旨。しかしこれは溝ができているわけではない。蔡英文氏が言えないことを代弁しているのだ。今現在、蔡英文政権の支持率は確かに低下しているが、だからといって今度は国民党に政権交代することはもうない。台湾国民は民主主義を守る民進党しか選ばない。では蔡英文氏はなぜ言いたいことが言えないのか。台湾の国名を変えるとか、憲法を変えるとか、独立とかを口にすればすぐさま武力攻撃すると中国が公言しているからだ。2005年の反国家分裂法の条文にある。蔡英文氏も野党時代は勇ましいことを言っただろう。だが、総統になったということは、背中にピストルを突き付けられている状況といえる。2300万人の国民を抱えて危険を冒すことはできない。私は彼女の気持ちをよく理解できる。そういう中で、独立派の先輩たちが、蔡英文氏を応援するために自分たちが代わりに声を出してあげようということなのだ。これは台湾の民主主義の成熟度を現している。

 

 そして、蔡英文氏は独立派の重鎮である陳菊氏(前高雄市長)を昨年、官房長官に、また台南市長だった頼清徳氏を首相に就けた。このように独立派を政権の中に取り入れることでアピールしている。では台湾はもう大丈夫なのか。いや全然大丈夫ではない。その置かれている状況は危ういといえる。沖縄、尖閣に比べると、台湾は大きな島だが、一番危ないのがやはり台湾だ。沖縄・尖閣はなんといっても日本の領土の一部だ。ここに中国はちょっかいを出しても、習近平主席は安倍首相とは握手をするし、日本の実効支配下にあることは大きい。では台湾はと言えば、まず国としてカウントされていない。日本が承認している国家は196ヵ国あるが、その中に台湾は入っていない。国連加盟国は193ヵ国あるが、台湾は未加盟。WHOからもユネスコからもその他あらゆる国際機関に加盟できず台湾は国際社会から締め出されている。それはひとえに中国が怒るから。なお「台湾」や「中華民国」と名乗ることを禁止されている。私たち独立運動家はこの中華民国という名前から独立することを目指してきたので、こう言うのも嫌悪感があるのだが。その代わりに「チャイニーズタイペイ」という名前で、オリンピックや世界陸上その他の大会に出なさいとなっている。その際、「チャイニーズタイペイ」のマークを付けるが、付けなければ出場できないので、仕方なくつけているだけだ。

 

 「チャイニーズタイペイ=中国の台北」とは、台湾人にとって屈辱的な名称だ。これもすべて中国の長期計画による。中国は台湾を侵略することを国家の目標として堂々と掲げている。その時、世界各国が非難出来ないように準備してきたのだ。外国から抗議が来たら、内政干渉だと。台湾など存在しない。チャイニーズタイペイだと。みんなそのマークを付けていたではないかと。中国という国はすごく長いスパンで計画を立て、実行する。台湾は今、かろうじて米国と日本の安全保障の枠組みの中で手をつないでいるので、中国は手出しできないでいる。今、韓国も北朝鮮も中国に逆らうことはできない。日本の周辺国で味方は台湾しかない。台湾が中国に侵略されてしまったら、中国の船舶も航空機も台湾から出発することになる。太平洋にも自由に出ていける。台湾海峡は日本のシーレーンだが、ここが中国の内海となる。そうなった場合、日本の船舶が通航できるかどうか、中国次第。ともかく、台湾を中国に取られたら、日本は一貫の終わり。そういう意味で日本と台湾は利害関係が一致している。

 

 では米国の台湾政策はどうか。米国には「台湾関係法」(1979)があるが、これは中国との国交樹立に際し、台湾と断交する前に準備した法律。その内容は台湾が武力攻撃された場合、米軍が防衛する旨、明記されている。その3年後、レーガン大統領が「六つの保障」提起(1982)。これは台湾関係法を維持するということ。2016年に台湾関係法とこの六つの保障を確認し、上下両院で承認して明文化。2018年3月にはトランプ政権が「台湾旅行法」制定。これによって米国と台湾で高官同士が行き来できるようになった。これまでは米国内でさえ中国のご機嫌を取ることが価値基準だった。さらに2018年5月のリムパック(環太平洋合同演習)に中国軍を招くのをやめた。中国は蔡英文政権になってから、台湾と国交のある国に断交を迫り、中国との国交樹立を求めてきた。先日、ホワイトハウスはそのことに懸念を表明した。ホワイトハウスということがポイントだ。日本にとって台湾は生命線だ。地理的にも地政学的にも。なおその住民は日本精神を共有する人たちだ。最後に今後、日本が採るべき方策を提案したい。一つ目、台湾を国として認める。二つ目は台湾が国際社会に認知され、国際機関に参加できるように率先して働きかける。三つ目、日台外交の基礎となる日本版「台湾関係法」をつくる。こう言うと、中国が怒るんじゃないかと必ず言われる。だが、中国が怒るだろうことを敢えて一歩踏み出してやることが日本と台湾を守る道だ。



藤井厳喜氏
 

「米中対立と自由アジアの興隆」
  藤井厳喜氏(国際政治学者)

 

 10月4日にペンス副大統領の演説があった。この重大性が日本では正確に伝わっていない。これは中共に対する宣戦布告といえる。その中身は、これまでの米国の対中政策が完全に裏切られたという結論。これは過去四半世紀近く、すなわちビル・クリントン政権、ブッシュジュニア政権、オバマ政権の期間に当たる。本来、共和党のブッシュジュニア政権時にいろいろと修正しておくべきだったはずだが、できなかった。

 

 ブッシュ政権の考え方は、「congagement」。すなわち軍事的には「containment=封じこめ」だが、経済的には「engagement=関与」だと。投資をし、技術を移転し、世界の自由貿易体制に組み込んでいけば、中国はやがておとなしい国になるというもの。この間、中国の経済規模は約10倍になったが、それにつれて軍事的にも明らかに脅威になってきた。日本でもこのような希望的観測がずっとあった。田中政権による日中国交回復の時から、中国は共産主義体制だが、圧倒的に貧しい国であり、ある程度豊さを手にすれば自然と中産階級が増え、外国人との交流も盛んになって、情報が流入し、自由化が進むだろうと。しかしそんな期待とは裏腹に国が豊になればなるほど軍国主義が強くなっていったのだ。一帯一路は、19世紀以前の西洋国家がやっていた政策そのもの。演説では、ウイグル、チベット、南モンゴルなどの問題を取り上げているが、要するに外国を侵略しているということ。これを中国国内の人権問題だと捉える人もいるが、それでは問題の本質がわからない。実際は独立国家だったチベット、ウイグル、東トルキスタンなどの国に中国が侵略を仕掛けて占領したその状態がいまなお続いているということである。占領下だからこそ人権弾圧が行われているということ。同じ漢民族であっても、共産党に歯向かったり、自由や人権などということを口にすれば、たとえノーベル平和賞を受賞した劉暁波氏であっても、監禁され、病気となってもまともな治療を受けることもできず、死去せざるを得なかった。

 

 トランプ氏いわく、過去四半世紀、中国経済を支援してきたのは我々だったのだと。反省だ。これを堂々と宣言したのが、ペンス演説。これを米中冷戦と呼ぶ向きがあるが、甘い。私が「米中新冷戦ーどうする日本」という本を書いたのが、5年前の13年1月。この時の予測はすでに米中はクラッシュコースということ。だが、当時は米政権はそれを自覚できなかった。2011年に米国はオサマ・ビンラーディンを殺害した。その場所はパキスタン。パキスタンは中国の同盟国。ビンラーディンは中国が匿っていたともいえる。なぜなら、中東でテロが起きる、米国内でテロが起きる、それによって米国は対テロ戦争に注力していった。いきおい中国の脅威に矛先が向かなくなった。そこには中国による謀略があっただろう。昨年11月、ISがほぼ壊滅し、アル・カイーダも残党のみとなって、いよいよ米国が中国問題に乗り出すということになってきたということだ。

 

 米議会と行政府で作る通称「チャイナコミッション」がある。これは中国で何が起きているかを調べて、年次報告書を出している。ここがペンス演説の6日後、300ページ以上ある報告書を出した。そこにはチベット、ウイグル等での人権問題、環境問題に加え、臓器移植の問題まで踏み込んだ。ペンス演説のエビデンスとなっている。ここにきて中国共産党が人類共通の敵だということがはっきりしたのだ。

 

 ペンス演説の中で、特に重要なのが、キリスト教徒が弾圧されているというくだりだ。その一節は、「2018年9月には中国共産党は中国における地下キリスト教会の最大なものの一つを強権的に閉鎖した。中国共産党政権は国中で十字架を破壊し、バイブルを焚書し、キリスト教徒を投獄している。いま、中国共産党はバチカンと合意に達したが、これは何と無神論者である中国共産党が中国におけるカトリックの枢機卿を任命する権利を得るというものである。中国のキリスト教徒は今、絶望の淵に沈んでいる」と。それに続けて、チベット仏教徒はこの10年で150人も焼身自殺していると。このキリスト教弾圧に触れたことがポイントだ。大部分の良きアメリカ人は良きキリスト教徒だ。特にトランプ政権の支持者は間違いなく、素朴で純真なクリスチャンだ。それが古代ローマの話ではなしに、21世紀の今日、同じクリスチャンに対する弾圧が行われているとなれば彼らは当然怒るだろう。実はペンス副大統領は7月26日、国務省が主催した世界宗教者会議でも演説をやっているが、その時はキリスト教の弾圧の話はあまりしなかった。これはここぞという時にとっておいたのかもしれない。

 

 日本は9月26日に日米首脳会談があり、その際、米国の対中包囲網に全面協力すると約束した。その後、安倍首相は中国に飛んで微笑外交をやっている。その極め付けは、円と人民元のスワップ枠を10倍にする約束をしたこと。今、中国が一番困っているのが、ドル不足。これまでの中国経済の原動力は、海外から稼いでくる米ドルだった。そのドルを干上がらせるというのが、トランプ政権の狙いだ。これに真っ向から対立することを日本がやっていいのか。海外から日本の外交政策をみると矛盾しているように見える。これまで中国経済を支えてきたのは欧州ではドイツやイギリスだったが、さすがに今の中国の状況にちょっと腰が引けてきた。そして気づいたら、日本が中国の一番傍にいるということになりはしないか。これでは日米関係が怪しくなりかねない。安倍政権も不安定要素をかかえていると言える。一方のトランプ政権も厳しい立場だ。シリコンバレーのIT企業は総じて親中派だ。マイクロソフト、アップル、フェイスブック等々。彼らはトランプ氏の経済制裁に反対。だが、その反対を押し切ってトランプ氏は対中制裁をやっているのだ。

 

 中国の経済発展パターンはもうおしまいだろう。そうなれば対外膨張したくてもできない。中国帝国主義の末路も近いかもしれない。習近平氏は強硬路線を取るしかない。いずれ、南シナ海で米中の衝突が起きるだろう。これによって中国は負ける。その際、日米間が密接に連携して対中包囲網を築けるかが問題。台湾は東シナ海と南シナ海の結節点。日本の防衛ラインは昔から大陸からの脅威に対して、日本列島と台湾をつなぐ列島弧を守ること。今後、日本の大企業がもう一度中国に投資するという話があるが必ず失敗するだろう。アメリカの経済状況はいま非常にいい。昨年12月、レーガン以来の大減税を断行した。これでアメリカの景気を良くして、それから対中経済制裁に入っているわけだ。今現在起きていることは、貿易摩擦などというせこい話ではない。これは中国が世界の覇権を米国から奪おうという戦いを仕掛け、米国が受けて立つということだ。よって中途半端には終わらない。

第182回世日クラブ講演会のお知らせ

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  テーマ

  「教育再生の根本課題」

 

講師:高橋史朗氏

 

 世日クラブの第182回定期講演会を12月14日(金)に開催いたします。今回は、麗澤大学大学院特任教授の高橋史朗氏を講師に迎え、「教育再生の根本課題」と題して語っていただきます。

 

 日本の教育再生は対症療法的な制度改革ではなく、予防に全力を挙げる必要があります。岡田尊司著『母という病』『父という病』が示唆している親性崩壊、親の保護能力の衰退という法や制度以前の根本問題の解決なくして教育は再生できません。また、従来の少子化対策のパラダイム転換を図り、幸福の物差しを取り戻す必要があります。

 三世代に及ぶ日本人の精神的劣化を克服し、家庭・学校・地域社会の人間力育成の三本柱をいかに立て直していくかについて、高橋氏に分かりやすく解説していただきます。
 

<講師プロフィール>

 たかはし・しろう 
 1950年 兵庫県生まれ。早大大学院修了後、スタンフォード大学フーバー研究所客員研究員、臨教審専門委員(政府)、青少年健全育成調査研究委員会座長(自治省)、松下政経塾講師・入塾審査員、埼玉県教育委員長、明星大学教授、玉川大学大学院講師を経て、現在、麗澤大学学校教育研究科道徳教育専攻特任教授、モラロジー研究所教授、男女共同参画会議議員(内閣府)、日本仏教教育学会常任理事、日本家庭教育学会常任理事、日本感性教育学会理事、親学推進協会会長。新著に『ウォーギルト・インフォメーション・プログラムと「歴史戦」』(モラロジー研究所)。
 

【演題】「教育再生の根本課題」
【講師】高橋史朗氏 (麗澤大学大学院特任教授)
【日時】平成30年12月14日(金)18:00受付開始、18:30開演
【会場】〒112‐0003 東京都文京区春日1-16-21 文京シビックセンター26階スカイホール
【会場に関する問い合わせ】03-5803-1100(財)文京アカデミー施設管理係
【交通案内】東京メトロ丸の内線、南北線の後楽園駅徒歩3分、都営地下鉄三田線、大江戸線の春日駅徒歩3分、JR中央・総武線の水道橋駅徒歩10分
【参加費】2千円(会員無料)、ネット申し込みは1500円。コチラ↓からhttps://passmarket.yahoo.co.jp/event/show/detail/019v66zxpvg4.html

【主催/後援】世日クラブ/世界日報社、言論人フォーラム

【連絡先】世日クラブ事務局・柏木、電話047(314)5761、FAX047(314)5762、HPはhttp://senichi-club.net

映画「ジョニー・イングリッシュ―アナログの逆襲」を観る

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 英国がホストを務めるG12!の開催が一週間後に迫るさなか、英国情報部(MI7!)のコンピュータサーバがサイバー攻撃を受け、所属する現役スパイの情報が漏洩。もはやスパイとして用を成さない事態に。そこでしょうがなく呼ばれたのが、元エージェントのジョニー・イングリッシュ(ローワン・アトキンソン)。彼は現在、小学校で教師を務める傍ら、見込みのある小学生を集めてスパイに育て上げる訓練を勝手にやっていた。

 

 犯人は明らかにズバ抜けたハイテク能力の持ち主だろう。ならば、こっちは徹底したローテク(アナログ)で対抗しようということで、イングリッシュは通常スパイに支給される最新スマホをゴミ箱に投げ捨て、その代わりに、もはや用済みで誰も見向きもしない、拳銃を要求。そしてよりとりどりのハイブリッドカーに目も呉れず、マニュアル式の真っ赤なアストンマーチンに乗り込むのだった。実際は彼が単にITの進化に付いて行けてないだけなのだが…。

 

 イングリッシュはMI7の地下室に追いやられていたかつての部下ボフを呼び戻し、早速ミッション開始。サイバー攻撃の信号が最後に感知された南フランスへと向かうのだった…。

 

 「007 スカイフォール」をモロ模したような設定とベタすぎるストーリー展開。ただ、ストーリーなど取って付けたようなもの。作り手が腐心するのは、「Mr.ビーン」ことローワン・アトキンソンの見せ場であるズッコケシーンをいかに作るか。後は鑑賞者は、先が読めてしまおうが、お約束だろうが絶対笑ってしまうから。もっとも、英首相役にハリーポッターシリーズのエマ・トンプソン、敵か味方か謎の美女に、「007 慰めの報酬」のボンドガールを務めたオルガ・キュリレンコと”無駄に”豪華なキャストが脇を固め、リアル感も共存させている。

 

 しかしこれ、金出してわざわざ、劇場の大スクリーンで観る必要性あるかぁ~? いやいや、このげに世知辛い現下の世情に、小難しいことを考えず、何も忘れて爆笑すること、これ大事。偶にはいいんだ、息抜きに。

月刊ビューポイント2018年12月号発行しました

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月刊ビューポイント12月号の内容は以下のとおり

 

◇PHOTO GALLERY

  故政治評論家・長野祐也氏偲び「お別れの会」

◇米国の分断 第3部「”自虐主義”の源流」

     早川俊行(編集委員)

  ・歴史を書き換えた1冊―人々から国家への誇り奪う

  ・邪悪な国と一貫して描写―歪んだ「ジン史観」

  ・党員の過去を偽ったジン氏―筋金入りの共産主義者

  ・主要20冊が全て左翼傾斜―偏向する歴史教科書

  ・学生に「反米」を植え付け―揺らぐ大学の価値

  ・対立助長する「多文化主義」―消える「同化」の伝統

  ・民主党支持増やす手段に―移民の政治利用

  ・かつては移民の同化を担う―変わる公教育の役割

  ・愛国心に訴えるトランプ氏―社会の亀裂どう克服

◇国益ネット放送局 パトリオットTV

  ゲスト:渡部悦和(日本戦略研究フォーラム・シニアフェロー)

   「米中対立で米支持明確にせよ」

◇懸案にどう挑む 第4次安倍改造内閣

  ・総仕上げへ有力後継競わす(政治部・小松勝彦)

  ・党に腹心そろえ改憲の布陣(政治部・武田滋樹)

  ・「経済成長重視が基本」貫く(経済部・床井明男)

◇新閣僚に聞く

  ・アジア睨み戦略的に沖縄振興宮腰光寛(沖縄・北方、少子化担当相)

  ・攻守の農業戦略で成長産業に吉川貴盛(農林水産相)

◇防衛レーダー

  安保語る資格ない共産濱口和久

◇インタビューFOCUS

  ・台湾海峡情勢の行方/最大の脅威は中国浸透工作

   ―羅福全(元台北駐日経済文化代表処代表)

  ・臨時国会にどう臨む/審査会で党改憲案の議論を

   ―加藤勝信(自民党総務会長)

◇ワシントン発 ビル・ガーツの眼

  ・米艦艇の台湾海峡航行は中国公海主権主張に対抗

  ・極超音速ミサイル、米が開発促進

◇オピニオン

  国連委と左派NGOの癒着 

     高橋史朗(麗澤大学大学院特任教授)

◇ワールド・スコープ

  ・カトリック教会性的虐待問題

    フランシスコ・ローマ法王窮地に(ウィーン・小川敏)

  ・韓国政府が北に忖度? 制裁解除を示唆

    「撃沈事件謝罪が先」保守反発(ソウル・上田勇実)

◇WHO'S WHOひと 「未踏」に抱く夢の足跡  

       阿部雅龍さん(冒険家)

◇沖縄から

  ・玉城デニー新沖縄県知事、前途多難な船出

         /辺野古移設阻止 国と対立激化

  ・高江ヘリパッド建設めぐる「検問」

         /二つの訴訟が同時進行(那覇・豊田剛)

◇持論時論

  ・開拓力と誇り持つ人材育成/普通の子供を素晴らしく

       中塩秀樹(平成の松下村塾塾長)

  ・「無意識」という人間の異界/意識は表層、異界に委ねる

       町田宗鳳(広島大学名誉教授)

◇世日クラブ講演会

  「安倍改憲の行方を占う~冷戦思考からの脱却が急務」

      髙橋利行(政治評論家)

◇救国救世ビジョン―家庭再建講座15

   第三章 日本型家族政策の必要性

    4.フランスの出生率上昇と女性の家庭回帰

◇文化

  ネコの子あれこれ

    ペットの風習ないタイ人(金子民雄・歴史家)

◇内村鑑三を読む

  「日清戦争の義」(3)

   新しい文明を東洋に敷くため(増子耕一)

◇山田寛の国際レーダー

  ・イスラエルとパレスチナ/育て、融和の心の種と芽

  ・ノーベル平和賞決定と日本/戦後70年談話が泣いては困る

◇教育

  ・「特別の教科 道徳」教科化の成果と課題

     「愛国心」明記に大きな意味(市原幸彦)

  ・貧困家庭の子供の居場所づくり

     職員の対応力や”自走”が課題(豊田剛)

◇メディアウオッチ

  <テレビ>

  ・彼氏チェンジと性病検査繰り返す女子高生に理解示す女医使うNHK

   (森田清策)

  ・セレブの街・青山に児童相談所建設で紛糾する説明会を特報したフジ

   (窪田伸雄)

  <新聞>

  ・柴山文科相の教育勅語に関する発言の揚げ足取り騒ぎ立てる朝毎

  ・佐々淳行氏の”遺言”スパイ防止法制定に触れなかった各紙の訃報記事

  ・閣僚の首を取ることに汲々とし野党議員の腐敗は大目に見る左派紙

   (増記代司)

<週刊誌>

  ・「移民大流入」に日本人が耐え得るのかとの問い掛けがない新潮の特集

   (岩崎哲)

◇論壇時評

  ー国内編ー

  ・「LGBT」と表現の自由/バッシング恐れる出版界

      森田清策(編集委員)

  ー海外編ー

  ・韓国抜きでも軍事訓練/北に核リスト提出迫る米     

  ・金永南氏が漏らした本音/韓国与党に「保守打破」提唱

      岩崎哲(編集委員)

◇ビューポイント

  ・マケイン氏と共に逝った米国 

     加瀬みき(アメリカン・エンタープライズ研究所客員研究員)

  ・『生きる力』の意味再考を 

     加藤隆(名寄市立大学教授)

  ・解明進まぬ露親子襲撃事件 

     中澤孝之(日本対外文化協会理事)

  ・諸文明が融合した中国文明 

     小林道憲(哲学者)

  ・平成31年度防衛予算に思う 

     杉山蕃(元統幕議長)

  ・安倍首相に改憲実現を期待 

     ペマ・ギャルポ(拓殖大学国際日本文化研究所教授)

  ・検証「奴隷貿易ユダヤ支配」説 

     佐藤唯行(獨協大学教授)

  ・パワハラ問題の頻発に思う 

     久保田信之(NPO法人修学院院長・アジア太平洋交流学会会長)

  ・虚構のグローバリズムを否定 

     浅野和生(平成国際大学教授)

  ・「白頭から漢挐」への統一企て

     宮塚利雄(宮塚コリア研究所代表)

  ・物価目標より景気持続が大切

     鈴木淑夫(鈴木政経フォーラム代表・経済学博士)

  ・進展見られぬ北朝鮮非核化

     遠藤哲也(元日朝国交正常化交渉日本政府代表)

  ・少年院生との双方向の交流

     ロバート・D・エルドリッヂ(エルドリッヂ研究所代表・政治学博士)

  ・台湾の戦略的価値の再考を

     茅原郁生(拓殖大学名誉教授)

  ・災害時の避難先の違い理解を

     濱口和久(拓殖大学大学院特任教授)

  ・米中軸に「第2次冷戦」到来

     櫻田淳(東洋学園大学教授)

  ・玉城新沖縄県知事への不安

     宮城能彦(沖縄大学教授)

◇社説

  ・本庶氏ノーベル賞/日本の医学の力を見せた

  ・LGBT条例成立/言論への抑圧を危惧する

  ・米中関係悪化/放置できない共産党覇権主義

  ・豊洲市場開場/世界視野にブランド確立を

  ・首相欧州歴訪/国際秩序守るため連携強化を

  ・米のINF離脱/中露の核脅威増に当然の対応

  ・日中首脳会談/注意を要する「一帯一路」協力

「ルオー展」を観る

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(ルオーが毎日祈りを捧げたキリスト十字架像)

 

 ジョルジュ・ルオー(1871~1958)。20世紀最大の宗教画家と称される。キリストの顔のアップをモチーフにした「聖顔」がつとに有名。パリの敬虔なカトリック信仰の家庭で育つ。彼の美術学校時代の教授で、ギリシャ神話や聖書をモチーフにした象徴主義の先駆者として知られる、ギュスターブ・モローに師事し、画家人生を出発。その87年の生涯にわたって「受難」や「キリスト像」を描き続けた。1953年にはローマ法王から勲章を授与されている。なお一昨年、現ローマ法王フランシスコが、8万人以上の若者を集めて祝福を与えたミサにおいて、ルオーの「聖顔」が浮かび上がるガラス素材の十字架のペンダントが配られた。これも今回展示されている。ルオーにとって絵画の製作は、信仰そのものであって、時代とともに、自分の内面と向き合いながら、作風を変化させていった。

 

 本展覧会は、4部構成よりなる。第I章 「ミセレーレ:蘇ったイコン」では、父の死と第一次大戦の勃発に接してルオーが構想したモノクロの版画集。ミセレーレ=神よわれをあわれみ給えの意。第Ⅱ章「聖顔と聖なる人物:物言わぬサバルタン」。トリノの聖骸布(キリストの遺体を包んだとされる布)の写真に衝撃を受けて着想した「聖顔」をはじめ、ジャンヌ・ダルクなど、サバルタン=被抑圧者をモチーフにした作品群。第Ⅲ章「パッション:受肉するマチエール」。パッションとはキリストの受難。マチエールとは画肌。晩年のルオーが絵具を何層にも重ね塗りして立体化したような技法に迫る。第Ⅳ章「聖書の風景:未完のユートピア」は、色彩豊かな風景画の中に聖書やキリストの愛の世界を注ぎ込んでいる。

 

 この展覧会に関して、NHKの「日曜美術館」で特集していたが、かなり前の同番組で、俳優の青木崇高(タレント優香の夫)がルオーの展覧会を訪ねるという企画があった。その中で青木は「聖顔」と対峙したその刹那、自分の顔を背けてしまった。そして血相変えていわく、あまりの神々しさや迫力に圧倒されて、まともに観るのが怖いと。意外に繊細な感性というか、清い心の持ち主なのだなと思った。当方はそこまで表立ったリアクションはなかったが、やはり「聖顔」のこちらを見つめる眼力には思わず釘付けとなった。日曜美術館でも語られていたが、ルオーが修道院に通った時代に影響を受けたジョリス=カルル・ユイスマンスは、「芸術的な美こそが宗教の根幹になければいけない」と言ったそうだ。移ろいゆく世の中にあって、変わらざるもの、ルオーが生涯追い求めた信仰の奥義、その体化物としての芸術の力にぜひ触れてもらいたい。

 

 「ジョルジュ・ルオー 聖なる芸術とモデルニテ」は、パナソニック汐留ミュージアムにて12月9日まで開催中。

映画「ボーダーライン ソルジャーズ・デイ」を観る

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 前作「ボーダーライン」(2015)は、メキシコの麻薬カルテルに最愛の妻と娘を殺されたコロンビア人の元検事、アレハンドロ(ベニチオ・デル・トロ)が、CIAのエージェントであるマット・クレイヴァー(ジョシュ・ブローリン)とタッグを組んで、麻薬カルテルのドンに迫り復讐を果たすというストーリー。なおカルテルに関わる殺人事件現場の捜査にあたったFBIの女性捜査官ケイト・メイサー(エミリー・ブラント)がミッションに加わるが、彼女には真の目的が知らされず、クレイヴァーたちの超法規的な捜査や次々と襲い来る非常事態に翻弄されていく姿を描く。メインの舞台は、メキシコのフアレス市。麻薬カルテルが支配するその地域は、見せしめとして、高架橋下に首なし死体が複数逆さ吊りされているシーンが強烈だった。ストーリーも映像もあまりにリアルで、ドキュメンタリー映画かと見紛うほど。ただ、一応女性が主人公になっていて、それだけでもソフトさが演出されていたのだが、続編である本作にエミリー・ブラントは出演していない。超ガチな男の物語。

 

 本作が肉薄するのは、米墨国境地帯での密入国問題。冒頭、ミズーリ州カンザスシティのスーパーマーケットで、自爆テロが起きるが、思わず目を背けてしまう壮絶さだ。密入国ビジネスも麻薬カルテルの資金源となっており、米大統領はカルテルをテロ組織に指定。そして、内々に国防長官から司令を受けたクレイヴァーが企てた作戦が、麻薬王カルロス・レイエスの娘の拉致だった。敵対する組織の犯行と見せかけて、カルテル同士の戦争を引き起こすというのだ。そこにまたアレハンドロが呼ばれるのだった。

 

 ベニチオ・デル・トロって寝ぼけたブラッド・ピットみたいな顔してるけれども、本作の役柄であるアレハンドロは、彼の無表情さがピッタリだ。復讐の青白い炎を内に秘めながら、無慈悲に敵を処断していく。ただ、今回その彼の揺るぎない信念が揺らぐ場面も。また、遂行中のミッションが急転直下中止されることにより、百戦錬磨のクレイヴァーにも困難が…。クレイヴァ―役のジョシュ・ブローリンもいい!!そしてラストは大ドンデンが待つ。

 

 本作はフィクションだが、そのテーマは政治的に微妙な問題を孕む、時あたかも中南米から米国を目指す移民キャラバンが続々とメキシコ国境へ到着していると報道されている。トランプ大統領は大統領選の公約にメキシコとの国境の壁建設を掲げ、10月の中間選挙の際にも不法移民や国境強化問題をことさら強調したが、共和党は上院では議席を上乗せし過半数を維持したものの、下院では民主党に過半数を奪われ、上下で多数派が異なるねじれ状態が現出した。議会運営が厳しくなったトランプ氏が報道されるように議会採決の必要ない大統領令を乱発して強行突破を図るのか。ただいずれにしても米国内の不法移民1000万人以上とは尋常でないし、本作によって国境地帯の闇が詳らかにされることにより、見方が変わるかも。

村田春樹氏講演「三島由紀夫と大東亜戦争」を聞いて

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 11月27日、「正論を聞く集い」において、村田氏が講演した。

 三島由紀夫は遺作となる「豊穣の海」4部作の最終巻「天人五衰」を書き終え、筆を置いたその足で、楯の会の制服に着替えて、一路、市ヶ谷へと向かったのだった。時に1970年11月25日、三島45歳。すでに押しも押されぬ大作家であり、ノーベル賞候補にその名が挙がっていたことも今では判明している。だが三島において、その栄光なぞ微塵も未練の対象ではなかったろう。

 

 これを遡ること25年の1945年8月19日、マレー半島ジョホールバルにおいて、守備隊長だった蓮田善明陸軍中尉(1904~1945)は、上官である中条豊馬大佐を射殺。ほどなくして自決を遂げた。故郷の熊本には妻と育ちざかりの三人の息子が残された。戦争が終わって漸く愛する家族の元へ帰れたにも関わらず、よりによってなぜ上官を射殺するなどという挙に出たのか。中条大佐がその前日に下士官らに訓示した内容は、「敗戦の責任を天皇に帰し、皇軍の前途を誹謗し、日本精神の壊滅を説いた」という。中条を国賊と判断して及んだ結末だった。

 

 実は蓮田は当時、日本を代表する国文学者でもあった。そして、その蓮田が見出し、育て上げたのが、誰あろう三島由紀夫だったのだ。16歳で「花ざかりの森」を著した三島に対して蓮田は、「悠久な日本の歴史の請し子」とまで褒め讃えた。蓮田は二度目の応召による出征前、三島に「日本のあとのことをおまえに託した」と言い遺している。蓮田の死はその1年後に三島らの知るところとなった。昭和43年(1968)、三島は、同人誌に蓮田善明の連載をはじめたその主宰者である小高根二郎に宛てたハガキに「蓮田氏と同年に至り、なお便々と生きているのが恥ずかしくなりました。蓮田氏の立派な最後を羨むほか何もできません」と書き、なおかつ、くだんの連載を単行本化した小高根著「蓮田善明とその死」(1970)の序文に三島は、「(蓮田)氏が二度目の応召で事実上、賜死の旅に旅立った時、残る私に大事なものを託していったはずだが、不明な私は長いこと何を託されたかわからなかった。それがわかってきたのは40歳近く、氏の享年に徐々に近づくにつれてであった」と書いた。

 

 村田氏は三島の自決について、かつて三島が蓮田の自決について同様の見解を示したように、謎でもなんでもない、当然の帰結であり、逆にやらなかった方が不思議だと述べ、講演の最後に、蓮田善明は戦後レジームと最初に戦った人。三島由紀夫・森田必勝は悠久の日本の歴史の中で、最後に特攻して戦った人だったと結んだ。

 

 二人の最後の決断が最善だったのか、それは問うまい。ただ、自らの栄光を微塵も顧みず、自身の信念に殉じたその精神は讃えらるべきだ。三島の自決からはや48年。蓮田の自決からは73年が経過した。もう多くの人は蓮田の名は無論のこと、三島さえ忘れてしまっている。そして、二人とは真逆の、他人を押しのけても自分さえよければいい、他人を陥れてまで自分が助かりたい…かかる人間の何と多いことか。時節柄、巷はにわかキリスト教国家が出現し、銭ゲバの正体がバレた一流会社会長や、高速道路で煽り運転をやり、事故を誘発して、子供の目の前で両親を死に至らしめた挙句、自ら無罪を主張する輩…嗚呼。蓮田や三島でなくともうんざりだわ。

 

 我が国の戦後は、「人命は地球より重し」の一言に集約されよう。命あってのものだねと。確かに、当方も神を信ずる立場からもそれは絶対冒されざるべき唯一無二の価値と認める。だが、こうも信ずる。その命を投げ打っても守るべきものがこの世にはあると。そして、人は人として生まれた理由をその生涯を通じて証明する責任があるとも。人として生まれて来ずとも、禽獣でよかったのではないか、そもそも生まれて来ない方が良かったのではないかなどと、ひと様から讒言を浴びせられたが最後、もう上記の限りではないと知るべきだ。そういう意味において、己の人生をいい加減に生きられようか。どんなに薄笑みを浮かべニヒリズムを決め込んでも、いずれ自分を自分で呪う日が来る。地面に拳を打ち付けて哭く日が来る。

 

 蓮田と三島はその戦後の価値観に真っ向から挑んだといえよう。しかしその巨大な敵に対して、二人の抵抗はあまりに無力だったのか。今現在、多くの人にとって両人の信条は理解され難い。だが、われわれはほんの7年前、日本人のDNAに刻まれていた大和魂をはっきりと知った。3・11東日本大震災である。我が身を顧みず、家族・友人はおろか、他人をも救わんとして犠牲となった多くの貴い生命があった。以前、当方が何度も主張したが、この大震災は、物質至上主義から脱却し、愛・家族・絆や神仏を認めるという目に見えない価値観への転換のこの上ない好機だったはずだった。否、そうしなければならなかった。事実そんな機運が盛り上がった。だが、あれから7年後のこんにち、被災地以外はすでに忘却の彼方。テレビは愚にもつかないバカ番組が目白押し。われわれは遠からずまた、あのショックを迎えなければならないのだろうか。

 

 さて、村田氏は定年を迎えてのち、私財を投げ打って日本および日本人の為の活動に日夜勤しまれている。今回は直接薫陶を受けた三島とその師である蓮田の話だったということもあるが、講演中めずらしく感極まる瞬間もあった。まさか”我が人生に未練なし”と覚悟を決めておられはしまいか。


第182回世日クラブ講演会が開催されました

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世日クラブ 

    親づくり支援こそ必要

麗澤大学大学院特任教授 高橋史朗氏が講演

 

 

 世界日報の読者でつくる世日クラブ(会長=近藤讓良・近藤プランニングス代表取締役)の定期講演会が14日、都内で開かれ、麗澤大学大学院特任教授の高橋史朗氏が「教育再生の根本問題」と題し講演した。

 

 高橋氏はこれまでの子育て支援が、働く女性の子育て負担をサービスの拡大で軽減することに目的が置かれていると指摘。現在、保育士による虐待や子供に愛情を感じられない親が増加していることに触れ、「保育士が保育士として、親が親として成長することを支援するのが『人づくり革命』。量的な拡大だけを強調する政策は質の向上を伴っていないので問題だ」と強調し、少子化対策のパラダイム転換を訴えた。

 

 また、高橋氏は従軍慰安婦問題など歴史認識問題についても取り上げ、「歴史修正主義」と決めつけ議論を封殺している状況を問題視。歴史事実を客観的に検証し、その事実を後世に残すことが重要とした上で、「大事なのは国際公共性の視点に立つこと。第三者の国々は客観的にどちらの言い分が国際的に公共性、普遍性、倫理性があるのか見ている」と話した。

 

 講演に先立ちあいさつした世日クラブの近藤会長は「隣国の韓国について、我々はなかなかその国民性を理解できないが、歴史的に苦しみや恨みの情が積み重なって現在の国民性ができた。その心情を理解しながらも、国際法だけはきちんと守ってほしい」と語った。(世界日報12月15日付1面より転載)

月刊ビューポイント2019年1月号発行しました

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月刊ビューポイント1月号の内容は以下のとおり

 

◇PHOTO GALLERY

  テュルク伝統音楽の調和と競演

◇人口減少社会を超えて

   第2部 〇戦後人口政策の誤り(人口問題取材班)

  ・「言葉狩り」で自由な論議封じる―2011年は人口減少社会の始まり

  ・産児制限が既定路線に―朝日のサンガー女史礼賛

  ・警告に逆行する74年決議―人口会議で「子供は2人まで」

  ・「独身女性王国到来」と朝日―出生率「1・57ショック」

  ・一家団欒より個人的自己実現―「少なく産み大事に育てる」が定着

  ・求められる総合的な支援―結婚したい若い男女は9割

◇検証 ’18米中間選挙(ワシントン・山崎洋介

  ・トランプ再選への課題/穏健派・無党派へ支持拡大必要

  ・革新勢力振るわず/民主党は路線対立の表面化も

◇高永喆の半島NOW

  高まる米の対北非核化圧力

◇インタビューFOCUS

  ・中間選挙後の米政治/共和・民主の対立激化も

   ―渡部恒雄(笹川平和財団上席研究員)

◇NEWSクローズ・アップ

 「移民の玄関口」の歴史刻む

   米ニューヨーク・エリス島/大量入国も保たれた「秩序」

                  (ニューヨーク・早川俊行

◇新閣僚に聞く

 ・観光のレガシー残す大会に櫻田義孝・五輪担当相)

 ・CO₂削減へ再エネ最大限導入原田義昭・環境大臣)

◇防衛レーダー

  新鮮味欠く「自衛隊『別班』」濱口和久

◇ワシントン発 ビル・ガーツの眼

  ・中国のウイグル弾圧強化、「一帯一路」推進の一環

  ・米中安保対話で米、南シナ海のミサイル撤去要求

◇アメリカ保守論壇(米コラムニスト マーク・ティーセン

  一貫性欠くトランプ氏批判

   偽善的なリベラル派/国境への米兵派遣に反発

◇ワールド・スコープ

  ・米政権がINF全廃条約離脱の意向

    中国のミサイル増強に対抗(ワシントン・山崎洋介

  ・オーストリア原発中止40年

    壮大な浪費、国民投票アレルギー(ウィーン・小川敏

  ・仏で燃料価格高騰、減税求めデモ加熱

    政府はエコカー普及目指すも苦戦(パリ・安倍雅信

  ・イスラエル治安機関が大規模テロ計画を阻止

    ハマス、西岸に実働部隊(エルサレム・森田貴裕

◇WHO'S WHOひと 障害者の努力を名誉に  

  迫田時雄さん(NPO法人アンハードノート・ピアノパラ委員会会長)

◇沖縄から

  ・辺野古移設阻止へ手を打つ玉城沖縄県知事

         /日米合意覆す材料はなし

  ・仲介役を担った 元米陸軍中佐の手記で明らかに

         /キャンプ・シュワブは地元が誘致(那覇・豊田剛

◇持論時論

  ・中国のウイグル強制収容所/実数は500万人から700万人

       ラビア・カーディル(「世界ウイグル会議」元議長)

  ・迫害された満州人/同化政策で葬られた満州語

      富君(亡命満州国政府総統)・史方騰(亡命満州国政府首相)

  ・役割増す学校図書館/子供の自立育む役割担う

       野村邦重(北海道学校図書館協会事務局次長)

  ・「精霊の守り人」を英訳して/わが子が喜ぶ本 米国にも

       平野キャシー(児童文学翻訳家)

  ・なぜ東トルキスタン独立を目指すのか/新疆大学長の兄に死刑判決    ヌリ・ティブ(在米ウイグル人牧場主)

◇救国救世ビジョン―家庭再建講座16

   第三章 日本型家族政策の必要性

    5.家族政策実施に向けた国民的コンセンサスを

◇文化

  武者小路実篤と「新しき村」

    トルストイの影響で社会運動へ(羽田幸男

◇内村鑑三を読む

  「日清戦争の義」(4)

   盗んだ者の道徳は堕落する増子耕一

◇山田寛の国際レーダー

  ・安田純平事件から/後継ジャーナリストへの助言

  ・出入国管理法改正に賛成だが/移民問題タブー視をやめよう

◇メディアウオッチ

  <テレビ>

  ・日本人の「精子力」の衰えを取り上げ日常生活での注意点を示したNHK(森田清策

  ・歯舞・色丹2島を最低か上限か各党が日露交渉を問うた「日曜討論」(窪田伸雄

  <新聞>

  ・代案なき安倍批判に終始し労組報道で産経の独壇場を許す朝日・毎日

  ・外国人労働者受け入れ拡大で「中国人問題」に関心示さぬ親中リベラル紙 (増記代司

  ・日米のインド太平洋構想で中国「一帯一路」の問題点をスルーした毎日 (堀本和博

  <週刊誌>

  ・原爆Tシャツ問題で韓国の無知とテレ朝の措置の双方を批判する新潮(岩崎哲

  ・現代医療に対し「祈り」の効用や高額医療の幣を鋭く指摘する記事2題 (片上晴彦

◇教育

  ・秋田県全域の小中学校で学校農園

     収穫までの苦労と喜び実感(伊藤志郎

  ・「親子の架け橋一筆啓上『親子の手紙』」

     100字の中に、ほのぼの親子の情愛(日下一彦

◇論壇時評

  ー国内編ー

  ・「LGBT」の政治利用/「差別」でミスリード

      森田清策(編集委員)

  ー海外編ー

  ・横柄な北の李善権委員長/失礼な言葉遣いに韓国民反発    

  ・文政権のキーパーソン/緊張緩和策進める文正仁教授

      岩崎哲(編集委員)

◇ビューポイント

  ・人権に無関心なトランプ氏 

     加瀬みき(アメリカン・エンタープライズ研究所客員研究員)

  ・新しい立憲君主国ブータン 

     ペマ・ギャルポ(拓殖大学国際日本文化研究所教授)

  ・中国の空母部隊建設に陰り 

     杉山蕃(元統幕議長)

  ・人気に陰りプーチン露大統領

     中澤孝之(日本対外文化協会理事)

  ・人生の旅路とどう向き合うか

     根本和雄(メンタルヘルスカウンセラー)

  ・カスピ海は「湖」か「海」か

     乾一宇(ロシア研究家)

  ・東アジアの平和と繁栄に貢献

     浅野和生(平成国際大学教授)

  ・豪「エルサレムに大使館」検討 

     佐藤唯行(獨協大学教授)

  ・「学問の自由」妨げる教育者

     ロバート・D・エルドリッヂ(エルドリッヂ研究所代表・政治学博士)

  ・外国人労働者の受け入れ拡大

     鈴木淑夫(鈴木政経フォーラム代表・経済学博士)

  ・ウイグル族迫害と米中「冷戦」

     櫻田淳(東洋学園大学教授)

  ・急接近するオーストリアと露

     小林宏晨(日本大学名誉教授)

  ・自主憲法制定の悲願忘れるな

     久保田信之(NPO法人修学院院長・アジア太平洋交流学会会長)

  ・イスラエルの思想と自己犠牲

     加藤隆(名寄市立大学教授) 

  ・中国の圧迫に苦悩する台湾

     茅原郁生(拓殖大学名誉教授)

◇社説

  ・韓国徴用工判決/国際社会の常識と懸け離れる

  ・インド太平洋構想/日米豪印ネットワーク強化を

  ・北方領土交渉/粘り強く4島返還実現を

  ・ペンス氏演説/中国の軍事的膨張を許すな

  ・ゴーン容疑者/経営者にあるまじき背信行為

  ・大阪万博決定/人類の未来へ発信力示す機会

  ・台湾与党大敗/中国の圧力強化に警戒を

映画「ディア・ハンター 4K」を観る

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 米ペンシルベニア州の山あいのロシア系コミュニティ。そこに住む幼馴染のマイケル(ロバート・デ・ニーロ)、ニック(クリストファー・ウォーケン)、スティーブン(ジョン・サヴェージ)らは地元の製鉄所で働く傍ら、酒盛りや共通の趣味の鹿狩りを楽しむなど、この町での暮らしを謳歌。スティーブンの結婚式は町をあげて盛大に挙行され、新郎新婦はもとより、参加者は誰も歓喜に包まれ、いつまでも余韻冷めやらぬと思えた。

 

 だがこの状況が一変する。折からのベトナム戦争の激化により、マイケルら3人が徴兵されることになった。3人は現地で再会するも、ベトコンの捕虜となり、彼らが興ずる実弾を使ったロシアンルーレットによる賭けのプレーヤーにさせられ、身も心もズタズタとなる。

 

 修羅場をくぐり抜け奇跡的に生還を果たしたマイケルは地元で英雄として迎えられる。だが、そこに残りの2人の姿はなかった。のちにスティーブンが送還されていることを知ることになるが、彼は妻や子との生活を拒絶していた。もう一人のニックは行方知れず。ところが、あることをきっかけに、ニックがベトナムに生存していることを確信したマイケルは、単身、再び忌まわしきかの地へと乗り込むのだった。

 

 歓喜に沸く結婚式、峻嶮な山での鹿狩り、狂気のロシアンルーレット。一見何の連続性もない、バラバラなシーン展開のように思えるのだが、彼らのアイデンティティが何なのかを随所にはっきりと示す。だからこそ、本作の代名詞でもあるロシアンルーレットが,戦争の狂気と相まって、この上ないアイロニーとなって迫ってくるのだ。だが、ラストシーンはマイケルと仲間たちは誰からともなく、「ゴッド・ブレス・アメリカ」を口ずさみ、各々がこみ上げる思いとともに、静かな合唱となる。マイケル・チミノ監督の真摯さを感じずにはいられなかった。

 

 本作のテーマ曲「カヴァティーナ」の哀愁漂うなギターの旋律は心洗われるよう。変転する時代や環境にあって、人生の儚さと人間にとって本当に大切にすべきものが何かを教えられる作品。

 

 40年ぶりのデジタルリマスター上映で 「4K」を謳うもそれはあまり感じず、オリジナルはどんだけ酷かったのだろうと逆に思う。それはそうと、ロバート・デ・ニーロ、メリル・ストリープ若っけ! クリストファー・ウォーケンかっけ!!

映画「アリー/スター誕生」を観る

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 プロ歌手を夢見ながら、ウェイトレスとして働くアリー(レディー・ガガ)。ある夜、オカマバーでワンスステージ披露していた時、国民的ミュージシャンのジャクソン(ブラッドリー・クーパー)が偶然ふらりと立ち寄り、二人は運命の出会いを果たす。

 

 当初、ジャクソンが一方的に入れ込んで、アリーはその求めに応じるかたちだったが、ジャクソンのコンサートに飛び入りし、聴衆の前でその歌声を披露したことを奇貨として、彼女の才能は開花し、一気にスター街道へ。そして二人はそのまま自然のなりゆきで結婚へと至った。

 

 まさにシンデレラストーリーを地で行く展開だったが、やがて二人の立場が逆転。夫婦関係にも微妙な影を落とし始める。そしてもともと酒浸りだったジャクソンの身に深刻な事態が訪れる。

 

 レディー・ガガの初主演作かつ、ブラッドリー・クーパーの初監督作。キャスティングも二人のパフォーマンスも申し分ないといえる。だが、ストーリーは…? 結局ミュージシャンなんて、酒とヤクと女が不可欠の芸の肥やしか。前科や病歴は勲章だってか。エリック・クラプトン、ポール・マッカートニー、ジョージ・マイケル、ボーイ・ジョージ、フレディ・マーキュリー、etc.キリがないわ。 邦人アーテイストも挙げてみようか?

 

 これが感動作? よく言うわ。依存症から抜け出せない者の悲惨な末路にシンパシー抱くのか? 肯定はしないが、ま、しょうがないねって? はっきり言う。依存症からは真なるものは万が一にも生まれない。煙草もネット・スマホ中毒も例外でない。アーテイスト(学術・言論界も同様)を名乗りたいなら、完全治癒してから出直せ。なんでこういう結末にしたのか。ラストのガガの神妙な歌い上げシーンが秀逸であればあるほど、逆に怒りが込み上げてきた作品だった。

皇居一般参賀に参列してきました

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 平成最後となる皇居一般参賀に参列してきました。平成で最多だった昨年を約3万人上回る約15万5千人という参賀者数だったとのこと。

 

 

 当方はむろん、それは想定済みだったので、例年どおり、10:10からの第1回目に参列すべく、昨年より早く家を出て現地に8:00には到着。しかーし! なんと結局1回目にはぎりぎり滑込めず、2回目を待つことに。

 

 

 寒風吹きすさぶ中、トータル4時間待ちはさすがに体にこたえたが(あまりの人の多さに風が遮られて逆に助かった面も)文句は言わない。ご老人や小っちゃな子供、車イズの人までいたのだ。

 

 

 まして地方から遠路はるばる、天皇皇后両陛下はじめ、皇族方を一目拝したいと駆けつけてきた方々のご足労を思えばなおさらのこと。東京に住んでいるだけで恵まれていると感謝せねば。

 

 

 それはそうと、想像以上の人、人、人。通常5回行われる参賀が、天皇皇后両陛下の強いご希望により、2回追加され、トータル7回行われたのだそう。これもご譲位を4か月後に控えた今上陛下にとって感慨ひとしおだったことでしょう。

 

 

 平成の御代から次の御代へ皇位がつつがなく、継承されることと、皇室の無窮なる弥栄を心よりお祈り申し上げました。雅子妃殿下もお元気そうでよかった。

映画「かぞくいろーRAILWAYS わたしたちの出発ー」を観る

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 「家族」…当方は子供のころから、ことさら意識したことはないように思う。なぜなら、あまりにも当たり前だから。そういう意味で、あらためて今日まで恵まれたきたのだとつくづく思う。本作は、その当たり前のことが叶わず、もがき苦しみながら、必死にその当たり前の姿にたどり着こうとする人々の物語。

 

 鹿児島県の上川内駅と熊本の八代駅を結ぶローカル線、「肥薩おれんじ鉄道」。そのロケーションは東シナ海を望む美しい海岸線沿いにほぼ位置する。なおディーゼルで走る気動車であり、車両は一両のみ。

 

 肥薩おれんじ鉄道のベテラン運転士である奥薗節夫(國村隼)のもとに、突如、押しかけてきた奥薗晶(有村架純)と10歳になるその息子の駿也(歸山竜成)。お互い面識はなかったが、晶にとって節夫は亡くなった夫、修平(青木崇高)の父、すなわち義父だったのだ。くも膜下出血によって突然世を去った修平。何度も節夫に電話し、その都度留守電にメッセージを吹き込んだ晶だったが、妻に先立たれてから一人暮らしで、留守電などついぞ気にも留めなかった節夫。晶はほかに頼るところがなく、仕方なく、東京から押しかけるかたちとなってしまったのだ。

 

 ここから、3人での生活が始まる。亡くなった修平は子供のころ、父の跡を継いで運転士になりたいと願ったが叶わなかった。その影響もあって駿也は大の鉄道好きだ。そこで駿也は、これからの仕事探しに悩む晶に、おれんじ鉄道の運転士になればいいと勧める。当初一笑に付した晶だったが、駿也の願いにこたえようと一念発起し、運転士を目指すことに。

 

 実は駿也は晶の実の子ではなく、修平の連れ子で、亡くなった前妻との間にもうけた一粒種だったのだ。実の母を亡くし、父の再婚により新しい母である晶を迎えたのもつかの間、今度は父を失い、継母と二人残された駿也。表面上は気丈にふるまっているが、内面は非常に複雑で不安定。そこへきて、右も左もわからない鹿児島の地に転校を余儀なくされてはなおさらのことだった。だが、晶とてこれまで家族の愛を知らずに生きてきた人間だった。

 

 やがて小学校で駿也が起こしたある”事件”をきっかけとして、歯車が狂いはじめ、晶と駿也の間には修復し難い亀裂が…。そんなガラス細工のような母子を説教するでもなく、弱さも未熟さもただ受け止めて、温かく見守る節夫。彼らは幾多の試練を乗り越え、再び家族の絆を取り戻せるのか…。

 

 本作について、主演の有村架純は、「いろんな形の家族があることを感じてもらえたら嬉しい」と、そして國村隼は、「家族というのは血のつながりではなく役割だと思う」と夫々述べている(本作パンフレットより)。ただ、家族の多様化というときに、欧米のように事実婚や婚外子が過半をしめ、まして同性婚まで認めてしまうようなことを想定するわけではないだろう。当方の考えは、DNA至上主義は唯物主義と同根いう点では國村と一致する。なぜなら、当方の身近には実子に恵まれなかったが、出産適齢期をかなり過ぎてからなお養子をとって立派に育てている家庭を一組、二組というのでなく、両手で効かないくらい知っているからだ。

 

 本作では桜庭ななみ扮する駿也の担任教師佐々木の不倫による懐妊も描かれている。人間の弱さという現実だろう。だが、「誰にも望まれない出産」だと否定的だった彼女が変わっていくのだ。

 

 人間とは弱いもの。不遇をかこい、悲しみを背負って生きる人たちならなおさらのこと。それでも「当たり前」の姿を求めて、お互い優しさを持ち寄り、必死に努力する姿こそ貴い。本作はそんな愚直で不器用な人たちの真摯なドラマ。 

 

 國村隼はとってもいい。本当の鹿児島の男に思えた。そしてまた一人、天才子役現る。歸山竜成だ。目が青木崇高にそっくりに見えるのはさらにドキッとした。板尾創路の鹿児島弁はちょっとイタかった。

月刊ビューポイント2019年2月号発行しました

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月刊ビューポイント2月号の内容は以下のとおり

 

◎人口減少社会を超えて

  第3部●識者インタビュー

   ・大泉博子氏(元厚生省児童家庭局企画課長)

     「人口政策」の重要性明言を/「産む性」の正しい教育を

   ・小川榮太郎氏(文藝評論家、日本平和学研究所理事長)

     極端な個人主義 少子化加速/頼りがいある男性復活を

◎波紋呼ぶLGBT請願

   ・当事者は条例に否定的―東京都港区アンケート

   ・狙いは同性婚の容認―危機感薄い地方、懸念の陳情も

◎迷走する北非核化(ソウル・上田勇実)

   ・狡猾な金正恩式戦術 ICBM解体ショーも

   ・親北史観根強い韓国 軍の教育も対北より反日

   ・南北が反日共闘行事 訪朝要請に鳩山元首相前向き

◎高永喆の半島NOW

   核固執は金体制崩壊の火種

◎トップニュース

   「慰安婦」「元徴用工」 韓国・文政権ジレンマ

     日本と国内支持層の板挟み(ソウル・上田勇実)

◎インタビューFOCUS

   逢沢一郎(日本・アフリカ連合(AU)友好議員連盟会長)

     アフリカ開発と日本/投資や消費に高まる関心

◎ワシントン・タイムズ特約

   イスラエル、中国企業に港の運営委託

     米政府が見直し求める

◎台湾統一地方選 大敗の背景

   「韓国瑜現象」と民進党の慢心(浅野和生・平成国際大学教授)

◎中国のウイグル人、民族浄化の危機に直面

   弾圧恐れず相次ぐ証言

◎ワシントン発 ビル・ガーツの眼

   米で中国系物理学者が不慮の死

     秘密技術移転計画に関与か

◎アメリカ保守論壇 米コラムニスト マーク・ティーセン

   ・ゲノム編集は人類の脅威

     深刻な道徳的危機を招来/胎児の遺伝子操作の可能性も

   ・オバマ氏の間違い繰り返すな

     トランプ氏、シリア撤退表明/IS復活、地域紛争勃発も

◎防衛レーダー 

   辺野古移設、加速を期待(濱口和久

◎ワールド・スコープ 

   ・ブラジルで保守新政権発足へ

     財政改革や汚職撲滅に期待(サンパウロ・綾村悟)

   ・シリアから米軍撤収

     イランの勢力拡大に懸念(エルサレム・森田貴裕)

◎WHO'S WHOひと 子育ての軸は家庭にあり

     梶田淑子さん(全国地域婦人団体連絡協議会副会長) 

◎沖縄から 

   ・辺野古埋め立て問う県民投票 宜野湾市議会も反対

     普天間固定化に直結

   ・自民党県連会長に復帰した照屋守之氏に聞く

     基地の整理縮小を前面に(那覇・豊田剛)

◎持論時論

   ・グリーフケア

     傾聴で悲しみに寄り添う(東和空・聴行庵住職)

   ・明治維新150周年

     利己的資本主義克服する契機に(前野弘明・岩国市議会議員)

   ・日韓友好の道

     若者の未来を拓く交流を(張忠植・檀国大学校理事長)

◎世日クラブ講演

   「教育再生の根本課題」

     高橋史朗(麗澤大学大学院特任教授)

◎救国救世ビジョン―家庭再建講座17

   第四章 同性婚合法化、「LGBT」問題にいかに向き合うか

    1.「パートナーシップ」導入には慎重な議論を

◎文化

   叙情詩人・三好達治

     記憶を美化した初期の叙情詩(羽田幸男)

◎内村鑑三を読む

   「日清戦争の義」(5)

     西洋文明による併呑、破壊、絶滅(増子耕一)

◎山田寛の国際レーダー 

   ・ブッシュ父大統領の米国 勝ち誇らない外交の力 

   ・18年の国際関係 ショックだった言葉

◎メディアウオッチ

  <テレビ>

  ・「死」タブー視せず延命治療の是非を家族で話し合う必要性伝えたNスぺ(森田清策)

  <新聞>

  ・代案も示さず専守防衛のお題目を唱える左派紙の無責任な空想的平和主義(増記代司)

  <経済誌>

  ・米中「新冷戦」時代の危険度を貿易と通貨の面からチェックする2誌(湯朝肇)

  <新聞>

  ・大嘗祭国費支出に反対し宗教狩りのように完全政教分離を主張する朝・東(増記代司)

  <週刊誌>

  ・保守とリベラルのねじれをグローバル化をめぐる対立軸で説明する毎日(岩崎哲)

  <新聞>

  ・「反基地無罪」叫び沖縄で違法行為繰り返す過激派を支援する左派紙(増記代司)

  <テレビ>

  ・自力人工授精で出産した女性カップル登場させLGBTの暴走あおるNHK(森田清策)

◎教育

  ・愛や家庭の大切さ伝える読み聞かせ

     絵本は国語力向上の最高の教材(豊田剛)

  ・日本遺産認定・秋田県由利本荘市の小学生

     北前船の寄港地テーマに新聞発表(伊藤志郎)

◎論壇時評

  ー国内編ー

  ・LGBT運動の到達点/脱規範化で家族解体

      森田清策(編集委員)

  ー海外編ー    

  ・韓国「次期大統領候補」特集/李総理1位も対日問題触れず

  ・「高句麗の夢」追う韓国/統一国家実現し勢力均衡へ

      岩崎哲(編集委員)

◎ビューポイント

  ・ゴーリスト・マクロンの欧州軍 

     加瀬みき(アメリカン・エンタープライズ研究所客員研究員)

  ・新ロシアでのラーゲリ生活

     中澤孝之(日本対外文化協会理事)

  ・頑張れ国産ジェットエンジン 

     杉山蕃(元統幕議長)

  ・ゴーン容疑者の道義的責任

     ペマ・ギャルポ(拓殖大学国際日本文化研究所教授)

  ・NGI構想で地方創生を

     ロバート・D・エルドリッヂ(エルドリッヂ研究所代表・政治学博士)

  ・長蛇の列となった台湾選挙

     浅野和生(平成国際大学教授)

  ・恒例となった北朝鮮漁船漂着

     宮塚利雄(宮塚コリア研究所代表)

  ・米ユダヤ教会堂襲撃の背景

     佐藤唯行(獨協大学教授)

  ・老後に対応する社会システム

     秋山昭八(弁護士) 

  ・不安材料に満ちた明年経済

     鈴木淑夫(鈴木政経フォーラム代表・経済学博士)

  ・正念場迎えた英のEU離脱

     遠藤哲也(日本国際問題研究所特別研究委員)

  ・日露国境線の変遷と北方領土

     濱口和久(拓殖大学大学院特任教授)

  ・玉城沖縄県政の空騒ぎ危惧

     西田健次郎(OKINAWA政治大学校名誉教授) 

  ・軍事外交を積極展開する中国

     茅原郁生(拓殖大学名誉教授)

  ・沖縄の県民投票実施に疑問

     宮城能彦(沖縄大学教授)

  ・耐用年数切れた「専守防衛」

     櫻田淳(東洋学園大学教授) 

◎社説

  ・米中首脳会談/中国は知財保護制度の整備を

  ・中国機器排除/同盟の抑止力維持に必要

  ・米のアフリカ戦略/関係強化で存在感高めよ

  ・新防衛大綱/「専守」では戦争を抑止できぬ

  ・COP24/協定精神尊重しルール守れ

  ・中国のスパイ活動/日本は防止法を制定せよ

  ・商業捕鯨再開/持続的な資源利用の範囲示せ


映画「マイル22」を観る

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 アメリカ東海岸のとある閑静な住宅街。 ジェームズ・シルバ(マーク・ウォールバーグ)をリーダーとするCIAの特殊作戦部隊と司令官のビショップ(ジョン・マルコヴィッチ)率いる情報サポートチームによる合同作戦「オーバーウォッチ」が始動。そのミッションは、ロシア工作員のアジトを奇襲し、工作員の確保と彼らの持つマル秘情報を押収すること。だが、思わぬ反撃にあい苦戦。最後は制圧したが、シルバは重傷を負いながら逃走しようとした18歳の工作員を殺害。この男は、「後悔するぞ」と言い残した。

 

 その16か月後、シルバらの所在は東南アジアのインドカー(架空国家)のアメリカ大使館にあった。この国で行方不明となった放射性セシウム4キロ(放射能爆弾ダーティボム66個分)を捜索中だったのだが、すっかり行き詰まっていた。そんな折、大使館の門に車が突っ込み、車内から一人の男が保護を求めてきた。高く掲げたその手にはセキュリティロックをかけたハードディスクが。その中身こそ行方不明のセシウムのありかのデータだという。しかもこのデータは8時間以内にロックを解除しなければ自動消去される仕掛になっていた。そして男は、このハードディスクと引き換えに自らの米国亡命を要求してきたのだ。実はこの男、リー・ノア(イコ・ウワイス)はシルバの右腕であるアリス・カー(ローレン・コーハン)の情報源の元軍人警官だった。果たしてこの男は信用できるのか。

 

 インドカー政府高官が米大使館にノアの引き渡しを求めてきた際、拘束されているノアの部屋に侵入してきた2人の男が彼に襲いかかり、壮絶な格闘のすえ、ノアは男らを殺害する。ことの重大性を悟った米政府は、ノアの亡命の受け入れを決定し、その国外脱出のミッションをシルバのチームに託す。米大使館から移送機が待つ飛行場まで22マイル(約35キロ)。ビショップ率いる情報サポートチーム、通称「マザー」も招集され、護送ルートの上空6000メートルには攻撃型ドローン、MQー9リーパーが監視。はたして、シルバらは小包(ノア)を無事届けることができるのか。命懸けの脱出劇が始まる。

 

 本作の本領は、本物かと見紛うアクションやドンパチ、あるいはラストの大ドンデンもさることながら、アメリカという国家の強靭さを浮き彫りにしたということだろうか。本作がフォーカスするCIAの特殊作戦チームは、実在するとされる「グランドブランチ」がモデルだ。劇中、シルバのセリフとして紹介されるが、国家的問題解決のため第1に外交、第2に軍隊、そして1と2が有効でない場合、第3の選択肢である彼らの出番だということだ。しかし彼らは公式的には存在しない。CIAがメンバーを招集するが、常設部隊でなく、ミッションごとの契約で国家関与は否定され、法の埒外に置かれる。劇中、敵との銃撃戦で重症を負い、動けなくなったメンバーの両手にシルバが手りゅう弾を手渡すシーンがあるが、そういう最期も覚悟しなければならない。では彼らを支えるモチベーションは何だろうか? 金? ぜいたくな暮らし? 地位名誉? 家族のだんらん? どれもまったく割りに合わないだろう。

 

 ”最上級の愛国心に取り憑かれたゴースト” これこそ彼らにもっともふさわしいフレーズだ。事の是非を論じてもそれは不毛だろう。これが世界の現実なのだから。知らぬは米国製の平和憲法とやらを後生大事に戴くわが日本ばかりなり。

第183回世日クラブ講演会ご案内

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テーマ

     「激変する朝鮮半島情勢と日本」

 

 

講師:荒木和博氏

 

 世日クラブの第183回定期講演会を2月12日(火)に開催いたします。今回は、特定失踪者問題調査会代表で拓殖大学海外事情研究所教授の荒木和博氏を講師に迎え、テーマは、「激変する朝鮮半島情勢と日本」となります。

 昨年、米朝は緊張関係から一転、シンガポールでの米朝首脳会談へと至りました。しかし、核問題は何も解決しておりません。韓国は北朝鮮へ傾斜する一方で、日本とはいわゆる徴用工問題やレーダー照射問題で関係が悪化する一方です。また国内では、経済の悪化で文在寅政権への不満は高まっています。

 激変する東アジア情勢の中で昭和、平成の忘れ物とも言える拉致問題をどのように進展させるのか。今相次いで漂着している北朝鮮木造船の問題も看過できません。これらの問題について、荒木氏に鋭く切り込んでいただきます。

 皆様の多数のご参加をお待ちしております。

 

【プロフィール】
 あらき・かずひろ 
昭和31年、東京生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。民社党本部書記局に入局し、教育・広報・青年運動などを担当。平成6年、民社党解党に伴い退職。同年より平成14年まで、現代コリア研究所研究部長。平成15年より、特定失踪者問題調査会代表。平成16年、拓殖大学海外事情研究所教授に就任。その後、予備役ブルーリボンの会代表、国家基本問題研究所副評議員委員長などを務め現在に至る。著書に『北朝鮮拉致と「特定失踪者」』(展伝社)、『自衛隊幻想』(共著、産経新聞出版)ほか多数。新著に『北朝鮮の漂着船』(草思社)。  
 

【演題】「激変する朝鮮半島情勢と日本」
【講師】荒木和博氏 (特定失踪者問題調査会代表)
【日時】平成31年2月12日(火)18:00受付開始、18:30開演
【会場】〒112‐0003 東京都文京区春日1-16-21 文京シビックセンター26階スカイホール
【会場に関する問い合わせ】03-5803-1100(財)文京アカデミー施設管理係
【交通案内】東京メトロ丸の内線、南北線の後楽園駅徒歩3分、都営地下鉄三田線、大江戸線の春日駅徒歩3分、JR中央・総武線の水道橋駅徒歩10分
【参加費】2千円(会員無料)、ネット申し込みは1500円。コチラ↓から

https://passmarket.yahoo.co.jp/event/show/detail/01ntxp102eu0f.html

【主催/後援】世日クラブ/世界日報社、言論人フォーラム

【連絡先】世日クラブ事務局・柏木、電話047(314)5761、FAX047(314)5762、HPはhttp://senichi-club.net

 

「『明治の日』実現!総決起集会」が開催されました

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 1月29日、憲政記念館において、『明治の日』実現!総決起集会が開催されました。今現在、11月3日は「文化の日」という国民の祝日であり、その趣旨は、「自由と平和を愛し、文化をすすめる」です。しかし本来この日は、明治天皇の御誕生の日であって、明治6年に天長節(今上陛下の御誕生日)となりました。昭和2年には、明治の御代を顕彰する祝日にしようという国民運動によって「明治節」として定められました。それが敗戦後、占領軍によって廃止させられ、昭和23年の祝日法によって、「文化の日」となり、現在に至るということです。

 

(古屋圭司議連会長)

 

 明治の日を実現するということは、明治節の理念を継承する祝日を復活させようという趣旨。

 

 会の冒頭、明治の日を実現するための議員連盟会長、古屋圭司衆院議員が法案成立にむけての経過報告をかねて挨拶。まず、「昭和の日」(4月29日。昭和天皇の御誕生日。平成19年以降、「みどりの日」を改めて制定)の実現には4回の国会提出が必要だったとし、今回も簡単ではないと内実を吐露。

 

(稲田朋美議連幹事長)

 

 なお、一部のメディアは国家神道を復活させるのかなどと批判しているが、そういういわれのない批判を絶対受けることのないようにしたいと明言。また文化の日は、文化勲章の授与式も開催されるなど、国民の間に定着しているとして、法案の趣旨は文化の日の定義をそのまま生かし、「近代化を果たした明治以降を顧み、自由と平和を愛し、文化をすすめ、未来を拓く」となったことを紹介した。

 

(塚本三郎協議会会長)

 

 その後、檀上に並んだ協議会の役員や、議連のメンバーがそれぞれ明治への思いを語ったが、印象的だったのが、協議会参与である大原康男國學院大學名誉教授と、同じく参与の西村眞悟元衆議院議員の講話。

 

(大原康男参与)

 

 大原氏は1891年(明治24年)に起こった大津事件を取り上げた。これは日本を訪問中のロシアの皇太子が滋賀県の大津町(現大津市)で警備にあたっていた巡査にサーベルで斬りつけられ負傷した暗殺未遂事件。当時のロシアは列強の一角の大国であり、この事件により、報復があるかもしれないと緊迫した情勢に。朝野をあげて、死刑にすべきという意見が大勢を占める中、時の大審院院長(現最高裁長官)である児島惟謙は、巡査に対して無期徒刑の判決を下し、日本の司法権の独立を守った。これは国家と法という問題を考える上で重大な事案として今に伝わる。

 

(高市早苗衆院議員)

 

 大原氏はこのような大事件が領土の割譲や、賠償金の請求、謝罪使の派遣などなしに収まったのはなぜかと問い、そこには後日談があったことを紹介。まず、明治天皇が事件を聞き、翌日朝一番の列車で、皇太子へのお詫びとお見舞いのために大津まで訪ねられた。これを皇太子は大変喜んだ。そしてお別れに食事をともにしたいとして、指定した場所がロシアの軍艦。これに天皇の側近らは慌てふためいた。下手をすればそのままロシアに拉致されるかもしれないと。

 

(衛藤晟一参院議員)

 

 これは杞憂ではなく、この3年前に朝鮮国王の父が清国の軍艦に乗ったまま拉致されるという事件があったからだそう。よって側近らはご遠慮された方がいいと上奏したが、天皇はそれではロシアに対し、礼を失すると。ロシアとて文明国であり、もし万が一そういうことが起こった場合はお前たちが迎えに来ればよろしいとして船に乗り込まれた。実際は大変和やかな食事の場となったという。食事を終え、天皇が何事もなく船から出て来られた時、そのご無事を確認した内務大臣西郷従道は、声を上げて泣いたそうだ。

 

(田沼隆志元衆院議員)

 

 そして一般国民においても、政府から何ら指図があったわけでもなく、軍艦が停泊する神戸港に、皇太子へのお見舞いの書状とともに、食べ物や酒、人形、鎧兜の装飾品などたくさんの品々が届けられ、その数、長持18個分となった。そしてこれを皇太子は大変よろこんだ。

 

(山田宏議連事務総長)

 

 大原氏いわく、天皇はこの時、体を張られたと。そして国民はその御心に感謝するとともに、自分たちでできることをした。まさしく君民一体となって危機を凌いだのだという逸話。

 

(西村眞悟参与)

 

 西村氏は、明治の日制定は、明治を現在のわれわれの中に蘇らせることだと主張。そして、日露戦争における奉天大会戦に勝利した3月10日の陸軍記念日、さらにバルチック艦隊を撃滅した5月27日の海軍記念日は、この明治の日と一体不可分でなければならないとした。なぜなら、これらの日がなかったら、我々は今、日本人ではないのだからと。

 

(山谷えりこ参院議員)

 

 そして、明治維新はたしかに薩長土肥が倒幕派、会津が佐幕派として戊申の役を戦った内乱もあった。しかし日清日露を克服して、国難に打ち勝った明治の人々は、倒幕派も佐幕派もない。よって、靖國神社に佐幕派として倒れた人々もともに祀られるべきだと。戊申で敵味方に分かれて戦った人々は等しく祖国のために我が身を捧げたものであることを確認すべきだとして、靖國にある大村益次郎像は横にどけるべきと提案した。

 

(江崎道朗氏)

 

 「文化の日」を「明治の日」に改める請願の署名総数は、平成31年1月28日現在、86万3969筆。一日も早い実現を当方も強く要望します。

 

(宇都隆史参院議員)

 

 賛同WEB署名はこちら→http://meijinohi.com/?page_id=815

 

坂東忠信著「亡国の移民政策」(啓文社書房)を読む

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 昨年末、改正出入国管理・難民認定法(入管法)が成立した。新たな在留資格(特定技能1号と2号)を設けて、人手不足に悩む14業種に外国人労働者の就労を認め、この4月から施行される。政府は1号について5年間で最大34万人(半数は技能実習生からの移行)の受け入れを見込む。政府は否定するが、実質の移民政策だとの批判が強い。

 

 これまでの技能実習生制度は、開発途上国への技術移転が目的だったが、現地の悪質ブローカーの介在とこれを安価な労働力として利用してきたのが実情で、低賃金に不満を持つ実習生が2013年からの5年間で延べ2万6千人が失踪しているという。彼らは高い賃金を求め、不法就労し、ビザが切れたら難民申請するという制度の逸脱がこれまで放置されてきた。これを正常化するという意味では必要な措置なのかなと思う。

 

 まず、本書でも示されているが、国連が定義する「移民」とは、「主権を持つ本国を離れて1年以上外国に住む者」。それに照らせば、留学生、技能実習生、永住者、特別永住者も完全な移民となり、その数260万人以上。立派な移民大国にもかかわらず、国民にその意識が皆無という状況こそ問題と坂東氏。

 

 そして労働力不足を外国人材で補うという今回の措置を坂東氏は、「きわめて短絡的で本末転倒な表面的解決」と切って捨てる。

 

 そもそもではなぜ、政府は今回の措置を講じなければならなくなったのかといえば、ひとえに生産年齢人口の減少による人手不足となるが、ではなぜそうなったのか、坂東氏は第1章「日本は既に『移民国家』」で細かく分析している。

 

 坂東氏は、今や大学進学率は5割を超えるが、その最高学府のレベルが「高卒の受け皿」や「社会へのカタパルト」「就職のためのラベル販売所」となっているという惨憺たる実情を伝える。しかしその惨憺たる最高学府のラベル獲得にさえ、奨学金利用率が5割に達し、卒業時に背負う返済額が、平均324万円という調査結果を示した上で、「結婚適齢期に該当する若者の約4分の1が借金持ちで、完済時には加齢臭ほのかに香るド中年」という事実は、「民族的に致命的情況」と嘆じるのだ。

 

 そして、「叱らない教育」「ゆとり教育」「核家族化」という中で「成人して実社会で働くようになった若者は心が折れやすく、その一部はニートとなってい」ること。その数55万人。

 

 さらに「借金をしてまでの大卒ラベル取得者にしてみれば、第1次・2次産業は考慮の範囲外で、工場勤めなど空きがあっても就職の対象では」ないとして、「厳然たる商業差別意識」が芽生えていること。

 

 さらに加えて、「男女協働思想で福利厚生も確立された結果、女性の独立性が高まり、男性の助けを必要とすることがなくなったことが晩婚化の原因」などと喝破。なるほど確かに「きわめて短絡的で本末転倒な表面的解決」法とは的を射ている。

 

 ところで政府は、前述の法案に先立ち、「改正水道法」を成立させている。これは水道事業を運営する自治体が予算や人員の不足により、赤字経営となり、将来立ち行かなくなることを見越して、都道府県による広域連携を推進することや、水道の運営権を民間に売却するコンセッション方式の導入などが盛り込まれている。しかし海外の事例では料金の高騰やサービスの低下を招いたり、再び公営に戻すという事態も起きているようだ。何せ水道はライフラインである。利益第一をモットーとする民営化には本来そぐわないはずだが、そうせざるを得ない状況まで追い込まれているということなのだろう。これまた生産年齢人口の不足、少子化のなれの果てなのだ。

 

 さて、あと本書で気にかかったのが、、第3章「日本の社会福祉がタダ乗りされる」で、外国人の生活保護受給の実態に迫る内容。生活保護法は、もとより国民のための法律であって、外国人を対象としてしていない。そのため、「生活に困窮する外国人に対する生活保護の措置について」とする昭和29年5月8日付の各都道府県知事あての厚生省社会局長通知を坂東氏は紹介し、そこに、「当分の間、暫定的に準用し支給する」とあると指摘している。その暫定的なる措置が、かれこれ60年以上継続しているというのも確かに腑に落ちない。そして、国別の被保護世帯数と当該国の総世帯数に占めるその割合を示す図表によれば、そのどちらも特定アジアの国が突出して多い。この状況を申しわけないとか恥だとか思わないのか。反日が国是というのも無関係ではあるまい。これを指摘すれば、やれヘイトとか非難されるとなれば困ったものだが、坂東氏は、「(むこうから)生存競争を仕かけられたなら生存競争で決着つけるのは当たり前」と意気込んでみせている。

 

 坂東氏は、自らの経歴について、「高卒で社会悪と戦おうと18歳で警察に入り50歳を超えても反日勢力を敵に回して粋がってる」と胸を張り、これからの時代、「必要とされているのは学歴ではなく、実社会に適応できる学力と実力、ハイレベルの専門知識」と豪語し、悩める若年世代を鼓舞しておられる。若者よ、このイジけたオッサンの主張を聞け!!

第183回世日クラブ講演会が開催されました

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北漂着船問題 危機感足りない

特定失踪者問題調査会代表 荒木和博氏が講演

 世界日報の読者でつくる世日クラブ(会長=近藤讓良〈ゆずる〉・近藤プランニングス代表取締役)の定期講演会が12日、都内で開かれ、特定失踪者問題調査会代表の荒木和博氏が「激変する朝鮮半島情勢と日本」と題し講演した。

 

 荒木氏は多発する北朝鮮からの木造船の漂着について、地元で保護された人のほかに2人が漂着し、行方不明だと言われている秋田県由利本荘市の例や、無傷に近い無人船から、漁に使われない革靴が見つかった青森県佐井村などの例を挙げ、北の工作員が潜入した可能性を指摘。「残念ながらあまり報道されないし、これに対する危機感を日本中で共有することができていない」と警鐘を鳴らした。

 

 さらに、北朝鮮にとって、日韓の連携は安全保障上の脅威であり、韓国内の反日感情を煽(あお)ることは韓国を北朝鮮側に引っ張ることもできるとした上で、「これは政権が変わっても終わりにならないし、そのうち収まると考えてはいけない。朝鮮半島を含む東アジアの構造をわれわれが変えて、自分たちでこの問題を解決するしかない。これから先がまさに日本の正念場だ」と語った。

 

 講演に先立ちあいさつした世日クラブの近藤会長は「日本の安全保障は憲法9条があるからではなく、日米同盟と自衛隊の意識の高さからくるもの。朝鮮半島や中国、ロシアはいつ武力行使をするか分からない。国民の意識改革が非常に大切だ」と語った。(世界日報2月13日付1面より)

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