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第24回記者を囲む会講演要旨

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テーマ「教育で何が再生されるべきか」
        講師:山本彰氏(世界日報社編集委員) -3月23日(土)開催

<教育再生の意義>
 
 第一次安倍政権の「教育再生会議」が、第二次安倍政権で、「教育再生実行会議」となった。安倍首相は「再生」という言葉が好きなようだ。教育のほかに「経済再生会議」や「外交再生会議」もあるようだ。

  最近『外務省の罪を問う』という本を出版した杉原誠四郎氏によれば、国益を一番損ねているのは、実は外務省だという。そういう意味では、ぜひとも安倍首相には頑張ってほしいと思う。

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 「再生」とは一度死んだ立場から再び生き返るという意味だが、では教育は一度死んだのか?それは実のところよくわからない。これまで教育に対して、様々な改革が試みられてきたわけだが、その総仕上げという意味を最も強調した言葉なのかもしれない。

 今次教育再生実行会議(座長:鎌田薫氏 早稲田大学総長)は、「いじめ予防対策基本法」「道徳教育の教科化」を提言に盛り込んだ。

 第一次安倍内閣の「教育再生会議」(座長:野依良治氏 ノーベル化学賞受賞者)では、いじめに対する緊急提言を出した。「道徳教育の教科化」も議論されたが、中央教育審議会等において、「価値感の押し付けになる」「心の問題を評価できない」などの意見も出て、結局教科化にはなじまないと結論された。しかしいわゆる教育三法制定など成果があった。

 今次安倍政権において、その教育再生会議で決めたことが“実行されていない”部分を実行させなければならないということで「実行会議」と名づけたともいえる。

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 教科書検定基準の改訂では、特に「近隣諸国条項」を見直す。これは1982年の「教科書誤報事件」に由来するもの。当時の鈴木善幸内閣における宮澤官房長官が出した談話に基づく。「わが国近隣諸国との近現代の歴史的事象の扱いに当たっては国際理解と国際協調の見地から必要な配慮がなされていることとする」という内容。

 また「教師のインターンシップ」導入。実はこれらはすでに自民党の「教育再生本部」で検討されてきたものだ。

<改正教育基本法>
 教育基本法の改正こそ、第一次安倍内閣の一番の功績といわれるが、実態はどうなのか。公明党に配慮して、「愛国心」を「国を愛する態度」と軟化させたりもしたが…。

「教育の目標」をかなり詳しく書いた。「公共の精神」や「伝統」という言葉、「国と郷土を愛する態度」を育成するなど。新旧を見比べると、旧法の内容を詳しく充実させていることがわかる。ただ宗教に関して、旧法では軽視されたような表現だったが、改正法では宗教の教養は尊重すべしとなった。「家庭教育」の項目があるが、それを国がどうやって推進するのかは疑問だ。謳ったはいいが、動いていないという状況。

 改正法に沿った教科書ができなければならない。教科書会社は、「編集趣意書」を提出する。「公民」に関しては、教育の目標に掲げてある、「国を愛する態度を育成する」という項目が本当に書かれているのかチェックされる。

 例に東京書籍の教科書をみると、「国と郷土を愛する態度を育成する」という部分は、「他国を尊重し、平和な国際社会を築く」となっている。

 きちんとそれが反映されているのは育鵬社と自由社のみだ。日本国の領土として、竹島や北方領土を図表入りで詳しく扱っている。

 もう一つ「公共の精神」が前文と教育の目標に盛り込まれたが、こっちはどうか?
東京書籍は、住民参加への拡大、住民投票、市長や地方議会を動かすなどとある。またボランティアやその団体の紹介があるのみ。そもそも「公共の精神」とは何か?公徳心をもって、皆で協力しあい、決められたことをちゃんと守るということがまず教えられなければならないだろう。

 教育基本法は改正されたものの、教科書にはほとんど反映されていないのが実態だ。反映されている教科書は、「新しい教科書をつくる会」による自由社や育鵬社の教科書だったが、索引にまでのせているのは、自由社だけ。その採択率は0.0数%という状況で、ほとんど影響がない。いい教科書を作っても売れない。これが実情。だから、検定基準を改訂すべきと安倍政権から出てきているだろう。教育現場では売れる教科書がいい教科書という認識がある。図表がいいとかわかりやすいレイアウトなどが重視されてしまっている。

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<道徳教育の教科化>

 戦前には道徳教育に相当するものとして、「修身」があったが、戦後GHQが禁止した。また修身の根本規範としての「教育勅語」があった。大変立派なものだったが、「一旦緩急アレバ義勇公ニ奉ジ、以テ天壤無窮ノ皇運ヲ扶翼スベシ」などの文言が問題視され、廃止へ。

 そもそも「修身」とは、四書五経の「大学」にある、「修身斉家治国平天下」からきている。がその前段に「格物知致誠意正心」という言葉がある。本来は、人間の真理探求、誠をもった正しい心が土台となった家庭、国家を説いていて普遍的内容となっている。

 46年に教育基本法が制定された時には、実は「教育勅語」はまだ残っていたが、その後、衆議院で排除、参議院で失効が決議とあいなった。

 51年天野貞佑文部大臣が「国民実践要領」を発表。立派な内容で道徳教育の必要性を唱えたが、野党や日教組から「反動的な修身教育の復活だ」と糾弾され、取り下げる。

 58年「道徳の時間」導入するも形骸化していき、自習時間などにあてられる。

 育鵬社が昨年「道徳教育をすすめる有識者の会」による「13歳からの道徳教科書」を出した。08年に「学習指導要領」が改訂され、新たに24の価値項目が設定されたが、それに即した内容となっている。具体的には、歴史上の人物やマザーテレサなどの格調高い偉人伝や、イチローの逸話などすばらしい内容なのだが、私は今一つピンとこなかった。

 そこで紹介したいのが、韓国に残った日本の「修身」。
韓国では、李氏朝鮮末期に日本にならって「修身」の教科書が作られた。日韓併合後もそのままずっと「修身」教育が行われ戦後にも受け継がれている。小3から高校1年まで道徳教育が国定教科書としてつくられている。

 それが「大韓民国道徳教科書」だ。これは明日にも起こりうる具体例が盛り込まれ、自分ならどうするかを考えさせる内容となっている。偉人伝もいいのだが、ちょっとかけ離れ過ぎるきらいがある。

 道徳教育には、むろんまず教科書をつくる必要性があるが、教える側の先生の質の向上が必要。

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 内村鑑三は「後世への最大遺物」(講演録)として、“お金”“事業”“思想”を揚げたが、さらに誰でも残すことのできるものとして「高尚なる勇ましい生涯」を説いた。

 道徳教育は、「有識者」にまかせておけばいいというものではない。もはや教材や、制度のみに頼るのではなく、自ら親として、また教師として、子供の手本となるべく精進し取り組んでいくべきだ。



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