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第173回世日クラブ定期講演会が開催されました。

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米軍 北攻撃の可能性も

日米韓の連携訴え

世日クラブ

拓殖大客員研究員 高永●氏が講演  (●=吉吉)

 北朝鮮情報の専門家で拓殖大学客員研究員の高永●氏は13日、世界日報の読者でつくる「世日クラブ」(会長=近藤讓良・近藤プランニングス代表取締役)で「北朝鮮核・ミサイル危機と韓国新政権」と題し都内で講演し、北朝鮮の核・ミサイル問題について、「日米韓は、安保上の運命共同体であり、日米同盟、米韓同盟は地域平和の二つの柱だ」と述べ、3カ国が連携して対処する重要性を強調した。

 高氏は、米朝間の緊張が高まる中、「北朝鮮は正面突破する形でICBM(大陸間弾道ミサイル)実験、6回目の核実験に踏み切る可能性が高い」と指摘。「今年、来年までがゴールデンタイム。米国が北朝鮮を叩(たた)くと専門家の間で言われている」とし、米軍による北朝鮮攻撃の可能性に言及した。その上で、米軍は偵察衛星や無人機による通信傍受、人的情報によって北朝鮮を24時間監視しているとし、「先制攻撃のタイミングを絶対に逃さないだろう」と強調した。

 また、文在寅大統領が当選したのは「葬(とむら)い選挙の結果」と指摘。文氏が自殺した盧武鉉大統領の秘書室長を務めたことに対する同情心やセウォル号事故に対する政権批判を最大限に利用したと分析した。このほか、韓国人に成り済まして慰安婦問題などで日韓離反を図る北朝鮮によるサイバー諜報(ちょうほう)作戦の成功も、文氏が当選した背景の一つとして挙げた。

 講演に先立ち、同クラブの近藤会長は、北朝鮮問題について「米国は、レッドラインについてはっきり言っていない。おそらく北朝鮮のICBMが発射された時だと思われるが、そうならないことを祈るばかりだ」と述べた。

 


渡部昇一先生を偲んで

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 渡部昇一氏が急逝されてからはや2か月が経たんとするが、ようやく論壇においても追悼特集が組まれている。

 

 WILLでは、歴史通の7月号増刊として、『追悼「知の巨人」渡部昇一 まるごと一冊永久保存版』をこの度出版した。その中身は、まず渡部氏の幼少期からこんにちに至るまでの貴重なグラビアがボリュームたっぷりの分量で挿入されている。そして生前交流のあった各界の識者による思い出話しや追悼文などと、これまでWILL誌上で繰り広げた渡部氏の珠玉の論稿が再録されている。

 

 その本文のトップを飾るのは、『渡部昇一先生に国民「名誉賞」を』と題した鼎談。出席者は、八木秀次(麗澤大学教授)、潮匡人(評論家)、永栄潔(元朝日新聞記者・「論座」副編集長)の各氏。その中で、永栄氏が、82年に雑誌「諸君!」に渡部氏が寄せた「萬犬虚に吠えた教科書問題」を話題に挙げる。これは当時の文部省の検定によって、高校の歴史教科書の華北への「侵略」という表現が「進出」に改めさせられたと各紙が一斉に報じたのだったが、誤報だったという事件。実際は、「侵略」に書き改めた教科書など一社もなかったのだ。にもかかわらず、誤報を詫びたのは産経新聞一紙のみ。あとはほっかむりを決め込んだ。朝日に至っては開き直って、巧みに論点をずらしながら、嘘を垂れ流し続けた。この問題の根が深いのは、誤報=嘘であるにも関わらず、当時の宮沢官房長官が談話を発表し、中韓に謝罪。そして、アジア近隣諸国に配慮するとして、「近隣諸国条項」が設けられ、以後、わが国の教科書検定において、外国からの干渉を許す羽目に。潮氏は、「あのとき、渡部さんがこの論文を書かなかったら、誤報が永遠の事実として、日本国の名誉を汚し続けていたことになっていたかもしれない」という。なお評論家の小室直樹は、「このときの日本政府、マスコミの反応は特筆大書し、今も研究の価値がある」(「封印の昭和史」徳間書店)としている。

 

 鼎談の中で永栄氏は、『渡部さんが誤報を確信したのは「世界日報」(八月六日)の報道(侵略が進出になった教科書が見当たらないとの著名記事)だったようですね」と言う。そう、世界日報だけが当時まともな報道をしたのだ。これには、いくつかの理由があろうが、新聞協会や記者クラブの恩恵に預かれなかったケガの功名という点もあった。

 

 渡部氏の「萬犬虚に吠えた教科書問題」(「諸君!の30年」文藝春秋所収)からその部分を引く。「七月二十七日頃から連日の報道にもかかわらず、半月近く経った現在でも各教科書の名前をあげて具体的記述の変化を記述したものは、私の目に入ったものでは『世界日報』(八月六日三)だけである」 「『世界日報』のものは、各教科書の実名をあげ、それがいかに変更されたか、また変更されなかったかをも具体的に一覧表にしてのべている。たとえば現行のものでも『侵略』を使っている『高等学校世界史』(清水)と『高等世界史』(帝国)は五十八年度にも『侵略』という表現を使い続けている点をはじめとし、その他の問題にされた点についても具体的な調査結果が示されている。そしてこの記事の作成者として小坂明、恒崎賢仁記者の名前をあげているのも責任を明らかにしている点で気持ちがよい」とある。

 

 このころから渡部氏には、世界日報と良好にお付き合いいただき、紙面にも何度も登場されたし、2004年には、「国家の興亡と再生」のタイトルで、世日クラブで講演いただいた。その講演の映像はないが、紙面に登場された記事の2本分は、「戦後60年 日本の針路を問う」に所収。ただ渡部氏が名前を挙げられた両記者はとうの昔に世界日報の在籍を外れている。なお2000年に世界日報から出版された鴨野守著「広島の公教育に再生の道はあるか」の帯には、「上智大学教授 渡部昇一氏が激賞!」とあり、その下に渡部氏が「『世界日報』こそ広島公教育荒廃の実態に鋭くメスを入れ、最も詳細にかつ客観報道したメディアである」のメッセージが。これは、渡部氏自ら申し出られたと当時の担当者から聞いた。もっともこの著者も、はや世界日報を去った。

 

 他方、渡部氏の「萬犬虚に吠えた教科書問題」を掲載した「諸君!」の当時の編集長である堤堯氏が、Hanada7月号に、「渡部昇一氏と『諸君!』の時代」と題して、「萬犬虚に吠えた~」が掲載された経緯を縷々述べているのだが、今一度、「萬犬虚に吠えた~」を読み返してみても、堤氏が述べる内容は一切出てこないのは何なのだろう。

 

 この「追悼『知の巨人』渡部昇一」に、WILLの発行人であるワックの鈴木隆一社長と編集長である立林昭彦氏による対談があり、その中で、WILL分裂騒動についての詳細が述べられているが、その中で事態を知った渡部氏は、「こんなことが許されるべきではありませんね。その雑誌にはもう書きません」と宣言された由。さもありなん。

 

 渡部昇一先生は個人的には、自虐史観の蒙を啓いて下さった恩師という思いがありますし、天下無双の学究の徒であることはもちろん、命の限り武士道を貫かれた日本男児でした。あらためてご冥福をお祈りします。

映画「怪物はささやく」を観る

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 人は誰しも母から生まれ出て、この世に生を得る。そしてやはり母からのたっぷりの愛情を受けて成育する。だから誰もがその母親に特別な思いを抱く。母親がその夫を愛し敬えば、子もそれを感得し、自然にその心が父親へと向かう。これが理想の家庭のかたちだろう。

 

 逆に母からの愛情を受けられないこと以上の悲劇があろうか。母の愛情とはどんな宝物にも代えがたい、人間形成に不可欠な要素であり、人の人生を決定づけるとさえ言える。

 

 さて、本作だが、主人公であるいじめられっ子中学生コナーは、癌に侵された母と二人で暮らす。コナーは毎晩悪夢にうなされていた。ある深夜、巨大な木の怪物がコナーを訪ねてきて、こう告げる。「これから3つの物語をお前に話す。そして4つ目の物語として、今度はお前が隠している真実を話せ」と。それから夜ごとにコナーの前に現れた怪物は、1話ずつ物語を語り始めた。

 

 この怪物は夢なのかまぼろしか。語られる物語はどれもコナーの意表を衝く内容で、彼を困惑させるが、徐々にその内面に変化を与えていく。その意味するところは何なのか。ラストにすべて解き明かされるが、これは母と子の絆をリアルとファンタジーで紡ぐ愛のストーリー。

月刊ビューポイント7月号発行しました

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月刊ビューポイント7月号の内容は以下のとおり

 

★巻頭グラビア

  フィリピン夏の祭典「アリワン・フィエスタ」

★特集

  9年ぶり左派政権/文在寅大統領の韓国 (ソウル・上田勇実)

 1.対北朝鮮―盧元政権より急進的親北

 2.日韓関係―「慰安婦」合意の見直し必至

 3.脱権威宣言―疎通アピールも新たな特権?

 4.北の工作―文氏当選へ露骨に宣伝扇動

★シリーズ

  どう対処 北の脅威  ――米有識者に聞く

 ①ケビン・メア(元米国務省日本部長)

   ・目前の危機 猶予許さず/今止めねば犠牲倍増

   ・敵基地攻撃能力急げ/半島有事に不可欠な在沖米軍

 ②マット・サーモン(前米下院外交委員会アジア太平洋小委員長)

   ・憲法9条改正を支持/総力挙げて国の存立守れ

 ③ジェームズ・ウルージー(元米中央情報局長官)

   ・電磁パルス兵器に警戒を

★トップニュース

  ・元駐ベトナム北朝鮮3等書記官が証言

    20年前から生物化学兵器搭載―北朝鮮無人機

  ・80年5月光州事件時、北朝鮮・金正日がクーデター画策

    「特攻隊」150人に韓国潜入命ず  (ソウル・上田勇実)

  ・オバマ前米政権がソロス氏系団体に資金提供

    東欧マケドニアの左翼運動支援し混乱助長 (編集委員・早川 俊行)

★ビル・ガーツの眼

  ・米国の安全脅かす中国のスパコン

  ・米軍特殊部隊 北有事へ作戦本格化

★チャールズ・クラウトハマー

  依然危ういトランプ大統領  THAAD予算めぐり混乱

★ワールド・スコープ 

  ・エジプトで日本式教育導入へ

   掃除や学校行事通じ協調性、自立性を育成 (カイロ・鈴木眞吉)

  ・マニラで相次ぐ爆弾事件  

   警察の諜報能力の低さに懸念 (マニラ・福島純一)

  ・中国「一帯一路」国際会議

   露呈した「インドの反中」 (池永達夫)

  ・台湾・蔡英文政権

   陣痛期の1年、大なた振るえず (香港・深川耕治)

★沖縄から

  沖縄市で45年祝賀大会

   大多数が本土復帰「良かった」 (那覇・豊田剛)

★インタビュー  

  ・ステファニー・コロイン(一般社団法人・日本銭湯文化協会公認 銭湯大使)

   銭湯の魅力 フランス人が再発見 

     手軽に毎日リフレッシュ (聞き手・宗村興一)

  ・トゥレイン・タン・ジン(駐日ミャンマー全権大使)

   東南アジアのラストフロンティア

     一番大切なのは平和と安定 (聞き手・池永達夫)

 

国際レーダー/防衛レーダー/論壇時評/メディアウオッチ/ビューポイント/社説 ほか

 

※月刊ビューポイント1か月無料試読出来ます。お申込みは下記URLをクリック!

http://viewpoint-web.com/otameshi.html          

 

  

映画「パトリオット・デイ」を観る

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 2013年4月15日、アメリカでもっとも長い歴史を持つマラソン大会であるボストンマラソンの最中に起きた爆弾テロ。4日間にわたる事件解決までの全容に本作が肉薄する。

 

 爆発はゴール付近の大観衆の中で2度起きた。多くのランナーがゴールする時間を見計らい、最大の効果を狙ったものだった。死者3人、負傷者は300人近くに上った。

 

 事件が起こった2013年は、まだISは出現していないものの、当初アルカイダはじめイスラム過激派組織の関与が疑われたが結局、犯人はチェチェン出身の兄弟によるローンウルフ型のテロだった。彼らはイスラム過激派の影響があったにせよ、ジハーディストとは言えまい。兄は警察との銃撃戦の末、死亡したが、一人で逃亡をはかった弟は最後には投降している。これは個人的なルサンチマンが主な動機の犯行。しかし、人を殺すことに何の躊躇もない二人の言動には慄然とする。

 

 警察との銃撃戦は、兄弟らが追い込まれた閑静な住宅街で起こったが、まるで戦場かと見紛う様相を呈した。彼らが所持していたパイプ爆弾によって、警察車両が次々と吹っ飛ばされていく。米国の治安を一手に担い、マシンガン武装した警察が、たった二人の初心者爆弾魔にキリキリ舞いさせられるのだ。

 

 それでも現場近くの倉庫に急造の捜査本部を設置し、リック・デローリエ特別捜査官(ケヴィン・ベーコン)指揮の下、水際立った捜査を展開するFBIと日本と違って犯人を射殺することも辞さない前提にせよ、テロリストに一歩も引かない勇猛果敢なJ・K・シモンズ演じる地元警察官には目を見張った。なお弟の捜索にあたり、地元知事は厳密には戒厳令ではないが、それに近い街全体の完全封鎖を行っている。

 

 さて、このようなテロが日本で起こったらどうなるか。本作はそのリアリティをわが国の喉元に突き付けている。この通常国会の最重要法案だった、テロ等準備罪を創設する改正組織犯罪処罰法案は成立を見たが、与党は金田法相の資質の問題も含め、本法案に対する不安定な答弁なども目立ち、野党は野党で、熟議などハナからする気などなく、揚げ足取りやレッテル張りに終始し、議論は深まらないままだった。

 

 野党は、「内心の自由」を楯に、やれ「監視社会になる」だ、誰が考えたか「花見か下見かは本人にしか分からない」などとうまいゴロ合わせのフレーズを言い募って、重箱の隅をつつき、国民不安を煽ることに腐心した。さらに採決にあたっては天然記念物指定?の牛歩も登場した。もとより反対のための反対にはうんざりだが、一抹の不安が頭をもたげたのも事実。ただ、読売6月16日社説が言うように、「捜査手続きは従来の刑事訴訟法に基づいて行われる。警察が新たな捜査手法を手にするわけではない」のだ。

 

 何より今回の改正法によって長年の懸案だった国際組織犯罪防止条約を批准することができ、テロリスト情報を共有化できるメリットは大きい。と言っても、本件のようなローンウルフ型のテロは防ぎようはずもないが。加えて、憲法に緊急事態条項が欠落していることの重大性を今さらながら痛感させられた。

 

 今回、主人公であるボストン警察巡査部長トミー・サンダース役のマーク・ウォールバーグは実在しない人物ということもあり、ちょっと存在感が薄かったが、本作の重要なメッセージを伝えていた。いわく、テロは憎悪によって起こされるが、われわれは愛で立ち向かうと。センチな観念論とみる向きもあろうが、これこそが人間に課せられた永遠の命題なのだ。人を憎み、高じて人を殺すとは実は簡単なこと。水が高きから低きへ流れるが如し。むろん誰しも心の中でそう思っても、あとが怖いから踏みとどまるのが通常だろう。翻って、人を愛するということがいかに困難か。そりゃ好きな人を愛するのはわけはない。それは当然として、生理的に嫌な人、自分と思想・信条や感性の合わない人、異なる人種、自分に危害さえ加える人を身もだえしつつ愛する。そんなバカなというなかれ。聖書にイエスは、右の頬を打たれたら、左も差し出せ、汝の敵を愛し、迫害する者のために祈れと言ったのではなかったか。こんにちまでのキリスト教がこのイエスのみ言葉を曲解し、その逆を実践してきたのも事実。しかしサンダースのセリフは、今こそ、2000年のキリスト教史を背負ってイエスのみ言葉に帰れと…大げさではあるまい。

 

 本作の最後に、実際にこのテロ事件の巻き添えとなって負傷したカップルや息子を失った父親、そして捜査にかかわった警察関係者など本人が登場してメッセージを語るが、その誰しもが、前述の命題に正面から向き合い、恨みつらみではなく希望と感謝を述べるに及んで、やはり驚きと涙を禁じ得ない。わけても恋人同士で双方が片足切断を余儀なくされたパトリック・ダウンズ氏とジェシカ・ケンスキーさんだったが、ダウンズ氏はテロの2年後から義足で走る練習をはじめ、昨年のボストンマラソンに参加し、完走したというのだ。本作のタイトルである「パトリオット・デイ=愛国者の日」は、独立戦争の緒戦におけるレキシントンの戦いの勝利を記念した、マサチューセッツ州など3州の休日の名称だが、メッセージを語った人々はじめ、テロに立ち向かったボストン市民の不屈の精神を表して余りある。本作にアメリカの底力を見た。

映画「ハクソー・リッジ」を観る

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 第二次大戦末期、日本軍が設定した「絶対国防圏」が突破され、いよいよ米軍が沖縄へと侵攻を開始した。「ハクソー・リッジ=のこぎり崖」とは沖縄戦において、米軍と日本軍のもっとも壮絶な戦いがあった「前田高地」の米側の呼び名。日本軍にとって前田高地は、第32軍司令部がある首里の防衛線の要であり、物量に優る米軍に対し、塹壕を張り巡らせての持久戦で迎え撃った。この高さ50メートルの断崖の頂上を掛けて、日米間で凄惨な白兵戦が展開されたのだった。

 

 その只中に本作の主人公であるデズモンド・ドス(田島貴男)はいた。彼は自らのキリスト教信仰とともに、第一次大戦に従軍し心を病んだ父親トム(エージェント・スミス)との家庭内トラブルによって、戦場においても人を殺すことはおろか、武器を手に持つことすらできないという特異体質だった。これは言い訳がましく聞こえようが、ただ彼は臆病でも卑怯でもない。周囲の若者が次々と軍に志願していく状況に矢も楯もたまらず、衛生兵専門として参戦。手や足がもげて瀕死の状態の者であっても決して見放さず、たった一人で総計75人もの負傷兵を救ったのだ。考えてみれば、ドスのミッションに比べれば、通常の兵士のほうが容易だったといえる。戦後彼は、国家から名誉勲章を授与されたが、全国民が認めるところだろう。これは後にも先にもないであろう類まれなる戦場のストーリー。

 

 本作の監督である初代マッドマックスが歴史に埋もれた実在の人物、デズモンド・ドスにスポットを当てた意味は深遠であろう。今世界は、ISの狂気をまざまざと見せつけられ、あれが許されるならこれくらいどうってことないという空気が澎湃としてある。暴力は鉄拳のみならず言葉によるそれも含め、身近なものと感じる。そこに共通するのは、強い者が弱い者に対してする卑怯で女々しく、醜悪なる所業。幼児虐待しかり、動物虐待しかり、いじめしかり、オレオレ詐欺しかり、ヤクザの因縁ツケしかり。一対一ではかなわぬものだから、徒党を組みバックをちらつかせ、弱みに付け込んで相手を服させる。別に外見上のヤクザ風情だけがヤクザじゃなく、学生の格好したヤクザやサラリーマン風、おばさんのそれもいる。国会議員とかも。

 

 世の中、げに世知辛く、自分可愛さで汲々としているというのが偽らざる姿だろう。そんな世の風潮を鼻で笑うが如く、真の男らしさとは、腕力に恃んだり、鼻息がどれだけ荒いかでなく、ましてやアルマーニを着こなして、BMWやメルセデスのエンジン音をこれみよがしに響かせることであろうはずもない。それは自身の命の危険さえ顧みずに、ただひたすら人を救うことなんだよとスクリーン上でこれでもかと見せてつけてくれる。

 

 本作は自分ファーストが習い性となった現代人に強烈なアンチテーゼとして迫り、その魂を揺さぶること必定。ただ、実話にしてもちょっと極端すぎてついていけない部分があるのも事実。あと米側からの視点による作品と百も承知でも、日本将兵の描き方は旧態依然たる陳腐さに辟易させられたことも付け加えておく。

月刊ビューポイント8月号発行しました

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月刊ビューポイント8月号の内容は以下のとおり

 

★巻頭グラビア

 台湾の穀倉地帯潤す嘉南大圳

★特集

 1.北朝鮮 制裁の現実

  国連北朝鮮制裁委員会元専門家パネル委員・古川勝久氏に聞く

                         (聞き手・早川俊行

  ・中国の圧力 本物でない/自国企業に明確に伝達せず

  ・トランプ米政権/軍事圧力を外交に転化できず

  ・各国の履行状況/イラン問題に比べ切迫感薄く

  ・決議違反のロシア/国際核機関に北の研究者

 2.香港・中国返還20年

     「一国二制度」の前途 (香港・深川耕治

  ・挫折した中港融合戦略

  ・中央政府の「全面管轄権」宣言

  ・不変の愛国教育路線

★ビル・ガーツの眼

 ・通信傍受や破壊工作の懸念――中国製機器が米国防総省に

 ・中国政府 クシュナー氏に接近

★米保守論壇

 ・ポストIS狙うシーア派 イランとロシアが勢力拡大

 ・止まらぬ大統領のツイート 世界に衝撃と混乱を招く

     (米コラムニスト チャールズ・クラウトハマー

★講演

  天安門事件から28年 新事実明らかに

    戦車による追撃の前に毒ガス散布 方政氏が講演

★ワールド・スコープ

 ・比への浸透図るIS

   イスラム過激派が要所を占拠 (マニラ・福島純一

 ・「強いインド」へ邁進―モディ政権3周年

   アジアの地域大国目指す (池永達夫

 ・欧州で初めて、イスラム教指導者が「反テロ宣言」

   過激主義との違い鮮明に (ウィーン・小川敏

 ・文政権、金正恩氏との会談に意欲

   対北対話モード全開  (ソウル・上田勇実

 ・過激化する反トランプ運動 

   生首人形の動画や暗殺劇 (ワシントン・岩城喜之

 ・アラブ4カ国、カタールに同胞団との断絶要求

   過激派支援で対立表面化 (カイロ・鈴木眞吉

 ・欧州で相次ぐテロ

   実行犯は地元移民出身 (パリ・安倍雅信

★沖縄から

  沖縄離島活性化推進事業を活用

    久高島に野菜工場建設へ(那覇・豊田剛

★時論自論

  ・「企業家ミュージアム」オープン

     宗教思想を経営に生かせ

    市川覚峯(日本経営道協会・一般社団法人企業家ミュージアム代表)

  ・地方行政から憲法改正論

     被害拡大防ぐため緊急事態法不可欠

       斉藤守(千葉県議会議員)

  ・いじめ・自殺撲滅運動

     地域を巻き込み国民運動に

       平林朋紀(「再チャレンジ東京」理事長)

 

その他、国際レーダー/防衛レーダー/論壇時評/メディアウオッチ/ビューポイント/社説 など

 

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「海の正倉院 沖ノ島 よみがえる建国の神々」電子復刻版で登場

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 国連教育科学文化機関(ユネスコ)世界遺産委員会は、7月9日、日本が推薦していた「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」(福岡県)の世界文化遺産登録を決定しました。5月のユネスコ諮問機関の国際記念物遺跡会議(イコモス)による沖ノ島(宗像大社沖津宮)と三つの岩礁のみを登録するのが適当との勧告を覆し、全8資産の一括登録となりました。これを記念して、平成5年(1993)9月に世界日報社から刊行された武藤正行著「海の正倉院 沖ノ島 よみがえる建国の神々」を電子版で復刊いたしました。以下のURLからご購入いただけます。販売価格1200円(税別)、閲覧には専用ビューワ(無料)が必要です。

↓      ↓     ↓     ↓

http://book.vpoint.jp/products/list.php?category_id=13

 

<目次>
まえがき
第一部 海の正倉院 沖ノ島
       ――祭祀遺跡発見のドキュメント――
 
   一、はじめに
       建国神話は「虚構(フィクション)」なのか?
   二、日本のシュリーマンとなって
       津田左右吉学説への疑問
       敗戦――「日本的なもの」の崩壊
       理解者はパリから来た紅毛碧眼のエトランゼ
   三、大和朝廷の関与した沖ノ島祭祀
       玄界灘の島々を調査
       『古事記』『日本書記』に登場する宗像の三女神
       韓国金海へ続く「海のシルクロード」
       「天孫を助け奉りて」の意味すること
   四、ついに実現した沖ノ島調査
       冬の玄海を渡り、単身沖ノ島へ
       反骨の企業家、出光佐三氏との出会い
       禁忌(タブー)破りで覚悟の祈り
   五、「戦後、最高最大」の発見!
       竜宮城さながらの神話の島
       おびただしい祭祀の遺物
       純金の指輪を日本で初めて発掘
       「三種の神器」による祭祀――既に四世紀に存在
   六、神話はフィクションではなかった
       神話の背景に歴史的体験あり
       金銀の島、国宝の島、民族復興の宝島
   七、韓半島から陸のシルクロードへ
       (1)黄金製指輪 (2)唐の三彩
       (3)切子装飾瑠璃碗 (4)金銅製心葉形杏葉

第二部 玄界灘は日韓を結ぶ「紐帯の海」
       ――志登ドルメン遺跡調査によせて――
   一、「玄界灘文化圏」と大陸文明
       九州に関係する三つの文化圏
       海を越えて来る衝撃
   二、日韓両民族の類似点(人類学の視点)
       背丈の高い半島から渡来人
       指紋、血液型、蒙古斑の類似性
   三、弥生式文化の形成と日本流入(民俗学の視点)
       北韓三八度線以南は「注連縄(しめなわ)文化圏」
       北方ツングース系文化と水稲文化の融合
   四、「原始日本語」の成立(言語学の視点)
       日本にあった母系制の時代
       日本語には南方系言語の要素が強い
       日本語ウヂ(氏)の語源を探る
       政治組織力にまさる北方ツングース系民族
       日本語と韓国語の系統的関係
   五、古代ドルメン文化の時代(考古学の視点)
       ヨーロッパとアジアにまたがる巨石文化
       ドルメンの分布と構造
       韓国と北部九州に共通する碁盤式支石墓
       志登の支石墓群を調査して
       玄界灘を自由に往来していた倭人たち

第三部 楽浪文化は流れて
       ――日本古代国家成立の文化的背景――
   一、楽浪――半島文化の先進地帯
   二、「漢委奴国王」の金印
       日本最古の金石文資料   
       金印偽物説の解消
       海上交通を支配した海人部族・阿曇氏
       志賀島に金印が埋蔵された理由
   三、楽浪文化と古代日本I
       トインビーによる日本文明の位置づけ
       楽浪出土の豪華な遺物群
       悲運の太子、菟道稚郎子(うぢのわきいらつこ)と人物画像鏡
       華麗な装飾壁画のある王塚古墳と珍敷塚古墳
   四、楽浪文化と古代日本Ⅱ
       吉川幸次郎氏と柿本人麿「月の船」
       楽浪文化を受容した縄文以来の国土と人間

結語 日本よ何処へ行く!

 

 

本書まえがき
九州大学名誉教授 文学博士 田村圓澄

 明治十四年(一八八一)刊行の『小学唱歌集』に発表された「蛍の光」は、「筑紫のきわみ、みちのおく」と歌っている。「九州の果て」「奥州の北端」の意味であるが、「中央」である東京の銀座にはガス灯が点り、また鉄道が走っていたが、九州や奥州は「文明開化」の枠の外にあると見られていた。しかし日本資本主義発達の原動力となる八幡製鉄所、そして石炭の供給地である筑豊は九州にあった。日本近代化の重要なエネルギーが、長く「筑紫のきわみ」に求められていたことの歴史的評価がなされていないまま、「蛍の光」は歌い続けられていた。
 

 目を、倭と呼ばれた古代の日本に向けるならば、古代中国の歴史書に初めて倭の「国」の名が記されたのは、『後漢書』の「奴国」であった。建武中元二年(五七)に、倭の奴(な)国の使者が洛陽に赴いて奉貢朝賀し、光武帝から印綬を賜った記事である。江戸時代中期の天明四年(一七八四)に志賀島(福岡市東区)から発見された金印は、奴国王が後漢の光武帝から授けられたものであり、「漢委奴国王」の五文字が刻まれている。いま福岡市博物館に蔵されているが、古代日本の黎明を語る、国際的にも貴重な遺品である。 三世紀の『魏志』東夷伝倭人条、すなわち「魏志倭人伝」において、女王卑弥呼の支配下に位置づけられた奴国の姿がうかがわれるが、奴国は那珂川の流域にあったと考えられ、須玖(すぐ)・岡本(福岡県春日市)は奴国王の居住地であった。ともあれ、中国本土や「韓国」と地理的に近い北部九州が、倭の中心の一つであり、古代中国王朝によってこの事実が認められていた。
 

 六世紀の筑紫君磐井は、筑紫・火(肥)・豊の諸国、すなわち九州の北半分を支配し、ヤマト政権軍と一年半に及ぶ抗戦を続けた。八世紀の藤原広嗣が大宰小弐の職権によって九州一円から兵を集め、聖武政府に対する反乱を起こしたが、抵抗は二ヵ月で終わっている。筑紫君磐井は新羅の法興王と同盟を結び、そして磐井の領有支配地域に住む新羅系・加耶系の渡来人が、磐井を支援した。
 

 渡来系の人びとが住む北部九州には、渡来系の神も鎮座していた。香春(かわら)神社(福岡県田川郡香春町)の辛国息長大姫大目命(からくにおきながおおひめおおまのみこと)は、『豊前国風土記』(逸文)によれば、「昔者(むかし)、新羅の国の神、自ら度(わた)り到来(きた)」りし神であった。宇佐八幡は、『宇佐託宣集』によれば、もとは「辛国」の神である。「辛国」は「韓国」であり、朝鮮半島南部にあった馬韓(百済)、弁韓(加耶)、辰韓(新羅)の三韓を指していた。
 

 いっぽう『古事記』と『日本書紀』に記された九州の神として、阿曇連(あづみのむらじ)等が祭る綿津見(わたつみ)三神(福岡市東区志賀島)と胸肩君(むなかたのきみ)等が祭る胸形(宗像)三神があり、このほかに住吉三神(大阪市住吉区、福岡市博多区住吉)がある。
 

 右の三柱の神は、いずれも「海の神」である。しかし『古事記』と『日本書記』が成立した八世紀の日本において、海神は綿津見・住吉・宗像の三神だけであったとすることはできない。漁撈や海上輸送にたずさわる人びとが住む日本の各地に、海神が祭られていたと考えられる。海神は、海上の安穏、豊漁などについて加護を与える神であった。
 綿津見・住吉・宗像の三海神について注意されるのは、第一に、いずれも古代の筑紫、すなわち福岡県に鎮座していることである。三神はヤマト政権に関連をもつと同時に、朝鮮半島また中国本土との海上交通にかかわっていた氏族の守護神であった、と見るべきであろう。第二に、三神はそれぞれの海上ルートを支配していたと考えられることである。つまり太平洋や大西洋を含む海一般の神ではなく、独自の「海上の道」を確保する豪族の守護神であった。このことは、筑紫の基地から朝鮮半島諸国また中国本土に出航し、またここに帰着する船と乗組員を管理・統率する豪族として、阿曇・津守・宗像の三氏がいたことを語っている。
 

 筑紫で奉祀されている綿津見・住吉・宗像の三神の出現、また鎮座の場所などについて比較すると、注目すべき差異のあることに気付くであろう。
 

 死んだ妻のイザナミの姿を見たイザナギは、驚いて黄泉国(よみのくに)から逃げ出し、筑紫の日向(ひむか)の橘小門(たちばなのをと)の阿波岐原(あはきはら)で禊(みそぎ)をしたという。身についた死の穢れを祓い清めるためであったが、このとき水の中から現れたのが、綿津見三神であり、住吉三神であった。いずれも男神である。
 

 いっぽう粗暴・無道の故に、両親のイザナギ・イザナミの二神から忌避された須佐之男命(すさのをのみこと)は、海の彼方の根国(ねのくに)に行くことを決意し、姉の天照大神に暇乞いをするため高天原を訪れるが、弟の須佐之男命には我が国を奪う邪心ありと推断した天照大神に対し、邪心のないことを証明するため、両神は誓約(うけい)をした。その結果、須佐之男命が吐く息の中からアメノオシホミミなどの五男神が、いっぽう天照大神が吐く息の中から、田心姫(たごりひめ)・湍津姫(たきつひめ)・市杵嶋姫(いちきしまひめ)の三女神が現れ、須佐之男命の善心が証明されたが、この三女神が宗像三神である。
 

 出現の場所についていえば、綿津見三神と住吉三神は、地上の日向国であるのに対し、宗像三神は高天原であった。しかも宗像三神は天照大神から生まれている。天照大神は宗像三神に対し、「海北道中」に降り、「天孫」を助けると共に、また「天孫」によって祭られるよう命じた。「天孫」とは歴代の天皇を指すであろう。
 

 筑紫に鎮座する宗像神と、ヤマト朝廷との並々ならぬ関係がうかがわれる。
 

 宗像大社の辺津宮(宗像郡玄海町田島)とそれより一二キロ離れた海上の中津宮(同大島村)、辺津宮より五七キロ離れた沖ノ島の三処をつらねる海上の道が「海北道中」である。沖ノ島には沖津宮がある。綿津見三神・住吉三神の場合、境内に三社殿が並び、それぞれに三神が奉祭されているのに対し、宗像三神は海辺と、海上の二つの島に展開した形で鎮座している。
 

 宗像沖ノ島の本格的な学術調査は、昭和二十九年(一九五四)に始まり、昭和四十六年(一九七一)までの十八年間に延べ一〇回行われた。その結果、沖ノ島に四世紀後半から九世紀までの祭祀遺跡二十二ヵ処のあることが確認され、夥しい遺物が発見出土した。絶海の孤島が、「海の正倉院」であることが明らかとなったが、昭和二十九年の第一次の沖ノ島学術調査を企画し、財政面の調達、調査団の組織などに重要な役割を果たしたのが、本書の著者の武藤正行氏である。
 

 宗像沖ノ島の祭祀遺跡調査の全容の報告を第一部とし、韓国と日本を結ぶ「玄界灘文化圏」の構想を第二部とする本書は、四十年前の宗像沖ノ島の発掘調査時の興奮に私どもを誘うと共に、日韓両民族を結ぶ原点について新しい智見を示している。
 

 恰好の時期に、恰好の著者によって完成される本書の上梓を悦ぶものである。
                               (平成五年六月記)

著者略歴
武藤正行(むとうまさゆき)
明治43年、福岡県生まれ。昭和6年、九州帝国大学文学部国史科卒業。戦後、福岡県教育委員会を経て、昭和37年東和大学講師に。同47年、東和大学教授、純真女子短期大学教授、同53年から国士館大学客員教授となる。著書には『日本歴史に流れるもの』『宗像神社と宗像文化』『新しい日本的思惟』など。専攻は日本思想史。


第174回世日クラブ講演会ご案内

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テーマ     

  「北朝鮮危機と

       混迷するトランプ外交」

 

講師:川上高司氏

 

 世日クラブ第174回定期講演会を8月22日(火)に開催いたします。今回は、拓殖大学海外事情研究所所長の川上高司氏を講師に迎え、「北朝鮮危機と混迷するトランプ外交」のテーマとなりました。

 

 北朝鮮の核・ミサイル危機が深刻度を増す中、肝心のトランプ米政権は「ロシアゲート」疑惑などが影響し、明確な外交戦略を打ち出すことができずにいます。

 

 トランプ政権が中国と取引し、中国の影響力の下で核を持った反日統一朝鮮が生まれることは、日本にとって最大の危機だと、川上氏は警鐘を鳴らしています。日本は今、どのような外交・安全保障政策を取るべきなのか、川上氏に語っていただきます。

 

<講師プロフィール>

かわかみ たかし

 1955年熊本県生まれ。大阪大学で博士号取得(国際公共政策)。米フレッチャースクール外交政策分析研究所研究員、ランド研究所客員研究員、財団法人世界平和研究所研究員、防衛庁防衛研究所主任研究官、北陸大学教授などを経て、2005年から拓殖大学教授。13年から同大海外事情研究所所長。米国の外交政策や軍事戦略、日米関係に詳しい。著書に『トランプ後の世界秩序』(東洋経済新報社、共著)、『無極化時代の日米同盟』(ミネルヴァ書房)など多数。

 

【演題】「北朝鮮危機と混迷するトランプ外交」
【講師】川上 高司氏 (拓殖大学海外事情研究所所長)
【日時】平成29年8月22日(火)18:00受付開始、18:30開演
【会場】〒112‐0003 東京都文京区春日1-16-21 文京シビックセンター26階スカイホール
【会場に関する問い合わせ】03-5803-1100(財)文京アカデミー施設管理係
【交通案内】東京メトロ丸の内線、南北線の後楽園駅徒歩3分、都営地下鉄三田線、大江戸線の春日駅徒歩3分、JR中央・総武線の水道橋駅徒歩10分
【参加費】2千円(会員無料)

【主催/後援】世日クラブ/世界日報社、言論人フォーラム

【連絡先】世日クラブ事務局・柏木、電話047(314)5761、FAX047(314)5762、HPはhttp://senichi-club.net

映画「君はひとりじゃない」を観る

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 検視官として、日常的に変死体の現場と向き合うヤヌシュ。妻を亡くしてからというもの、感情まで喪失したかのように淡々と仕事をこなし、楽しみと言えば、三度の食事とウオッカと煙草。どんな料理もおかまいなしに、これでもかとコショーを掛けまくるシーンが印象的だが、日頃の不摂生ぶりはその突き出たお腹が物語る。母の死後、摂食障害を患うようになった娘のオルガとの仲は険悪そのものだ。ただ最近、家の中の不可解というべき現象に合理主義者のヤヌシュは首をひねっていた。

 

 そのうち娘を面倒見切れないと判断したヤヌシュは、オルガを病院に連れて行き入院を目論む。そこで彼女のリハビリを担当することになったのが、セラピストのアンナ。摂食障害の少女を集めて、彼女が指導するセラピーはちょっと独特。実は彼女は数年前に幼い息子を亡くしているのだが、それ以来、霊媒体質となり、故人の声を聴いて遺族に伝えたり、自動書記を行ったりしていた。そんな彼女とヤヌシュ父娘はセラピーを通じて出会うことになったが、やがてアンナはヤヌシュの背後に声ならぬ声を聞くようになる。

 

 ヤヌシュが検視を手掛ける凄惨な事件現場は、舞台である現代ポーランドの殺伐とした世相を表すのか、その深刻さが伝わってくる。誰もが心を失くし、愛されない不平不満が澎湃として、ささいな摩擦でも発火の恐れなしとしないのは旧社会主義国ならではか、はたまたITの進化とそれによる情報の洪水に、木の葉のごとく翻弄される万国共通の病弊か。そこにスピリチュアルなるものを求める動きは、人間の心の発露として自然な成り行きだったろう。

 

 さて、身近な人の死は、残された側に耐えがたい痛みと喪失感をもたらすが、本作のタイトル「君はひとりじゃない」とは、劇中のアンナのセリフにもあるのだが、愛する人はたとえ目には見えなくとも、いつもともにあるというメッセージが込められていよう。ストーリーの流れからいくと、ラストは何となく予想がついたのだが、見事に裏切られた。家族を尊重しつつも、説教調でないところがまたいい。理解不能なエロティックなシーンは自由すぎるキライはあるが…。

映画「パトリオット・デイ」を観る

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 2013年4月15日、アメリカでもっとも長い歴史を持つマラソン大会であるボストンマラソンの最中に起きた爆弾テロ。4日間にわたる事件解決までの全容に本作が肉薄する。

 

 爆発はゴール付近の大観衆の中で2度起きた。多くのランナーがゴールする時間を見計らい、最大の効果を狙ったものだった。死者3人、負傷者は300人近くに上った。

 

 事件が起こった2013年は、まだISは出現していないものの、当初アルカイダはじめイスラム過激派組織の関与が疑われたが結局、犯人はチェチェン出身の兄弟によるローンウルフ型のテロだった。彼らはイスラム過激派の影響があったにせよ、ジハーディストとは言えまい。兄は警察との銃撃戦の末、死亡したが、一人で逃亡をはかった弟は最後には投降している。これは個人的なルサンチマンが主な動機の犯行。しかし、人を殺すことに何の躊躇もない二人の言動には慄然とする。

 

 警察との銃撃戦は、兄弟らが追い込まれた閑静な住宅街で起こったが、まるで戦場かと見紛う様相を呈した。彼らが所持していたパイプ爆弾によって、警察車両が次々と吹っ飛ばされていく。米国の治安を一手に担い、マシンガン武装した州警察が、たった二人の初心者爆弾魔にキリキリ舞いさせられるのだ。

 

 それでも現場近くの倉庫に急造の捜査本部を設置し、リック・デローリエ特別捜査官(ケヴィン・ベーコン)指揮の下、水際立った捜査を展開するFBIと日本と違って犯人を射殺することも辞さない前提にせよ、テロリストに一歩も引かない勇猛果敢なJ・K・シモンズ演じる地元警察官には目を見張った。なお弟の捜索にあたり、地元知事は厳密には戒厳令ではないが、それに近い街全体の完全封鎖を行っている。

 

 さて、このようなテロが日本で起こったらどうなるか。本作はそのリアリティをわが国の喉元に突き付けている。この通常国会の最重要法案だった、テロ等準備罪を創設する改正組織犯罪処罰法案は成立を見たが、与党は金田法相の資質の問題も含め、本法案に対する不安定な答弁なども目立ち、野党は野党で、熟議などハナからする気などなく、揚げ足取りやレッテル張りに終始し、議論は深まらないままだった。

 

 野党は、「内心の自由」を盾に、やれ「監視社会になる」だ、誰が考えたか「花見か下見かは本人にしか分からない」などとうまいゴロ合わせのフレーズを言い募って、重箱の隅をつつき、国民不安を煽ることに腐心した。さらに採決にあたっては天然記念物指定?の牛歩も登場した。もとより反対のための反対にはうんざりだが、一抹の不安が頭をもたげたのも事実。ただ、読売6月16日社説が言うように、「捜査手続きは従来の刑事訴訟法に基づいて行われる。警察が新たな捜査手法を手にするわけではない」のだ。

 

 何より今回の改正法によって長年の懸案だった国際組織犯罪防止条約を批准することができ、テロリスト情報を共有化できるメリットは大きい。と言っても、本件のようなローンウルフ型のテロは防ぎようはずもないが。加えて、憲法に緊急事態条項が欠落していることの重大性を今さらながら痛感させられた。

 

 今回、主人公であるボストン警察巡査部長トミー・サンダース役のマーク・ウォールバーグは実在しない人物ということもあり、ちょっと存在感が薄かったが、本作の重要なメッセージを伝えていた。いわく、テロは憎悪によって起こされるが、われわれは愛で立ち向かうと。センチな観念論とみる向きもあろうが、これこそが人間に課せられた永遠の命題なのだ。人を憎み、高じて人を殺すとは実は簡単なこと。水が高きから低きへ流れるが如し。むろん誰しも心の中でそう思っても、あとが怖いから踏みとどまるのが常だろう。翻って、人を愛するということがいかに困難か。そりゃ好きな人を愛するのはわけはない。それは当然として、生理的に嫌な人、自分と思想・信条や感性の合わない人、異なる人種、自分に危害さえ加える人を身もだえしつつ愛する。そんなバカなというなかれ。聖書にイエスは、右の頬を打たれたら、左も差し出せ、汝の敵を愛し、迫害する者のために祈れと言ったのではなかったか。こんにちまでのキリスト教がこのイエスのみ言葉を曲解し、その逆を実践してきたのも事実。しかしサンダースのセリフは、今こそ、2000年のキリスト教史を背負ってイエスのみ言葉に帰れと…大げさではあるまい。

 

 本作の最後に、実際にこのテロ事件の巻き添えとなって負傷したカップルや息子を失った父親、そして捜査にかかわった警察関係者など本人が登場してメッセージを語るが、その誰しもが、前述の命題に正面から向き合い、恨みつらみではなく希望と感謝を述べるに及んで、やはり驚きと涙を禁じ得ない。わけても恋人同士で双方が片足切断を余儀なくされたパトリック・ダウンズ氏とジェシカ・ケンスキーさんだったが、ダウンズ氏はテロの2年後から義足で走る練習をはじめ、昨年のボストンマラソンに参加し、完走したというのだ。本作のタイトルである「パトリオット・デイ=愛国者の日」は、独立戦争の緒戦におけるレキシントンの戦いの勝利を記念した、マサチューセッツ州など3州の休日の名称だが、メッセージを語った人々はじめ、テロに立ち向かったボストン市民の不屈の精神を表して余りある。本作にアメリカの底力を見た。

映画「ハクソー・リッジ」を観る

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 第二次大戦末期、日本軍が設定した「絶対国防圏」が突破され、いよいよ米軍が沖縄へと侵攻を開始した。「ハクソー・リッジ=のこぎり崖」とは沖縄戦において、米軍と日本軍のもっとも壮絶な戦いがあった「前田高地」の米側の呼び名。日本軍にとって前田高地は、第32軍司令部がある首里の防衛線の要であり、物量に優る米軍に対し、塹壕を張り巡らせての持久戦で迎え撃った。この高さ50メートルの断崖の頂上を掛けて、日米間で凄惨な白兵戦が展開されたのだった。

 

 その只中に本作の主人公であるデズモンド・ドス(田島貴男)はいた。彼は自らのキリスト教信仰とともに、第一次大戦に従軍し心を病んだ父親トム(エージェント・スミス)との家庭内トラブルのトラウマによって、戦場においても人を殺すことはおろか、武器を手に持つことすらできないという特異体質だった。これは言い訳がましく聞こえようが、ただ彼は臆病でも卑怯でもない。周囲の若者が次々と軍に志願していく状況に矢も楯もたまらず、父親の反対を押し切り、衛生兵専門として参戦。手や足がもげて瀕死の状態の者であっても決して見放さず、たった一人で総計75人もの負傷兵を救ったのだ。考えてみれば、ドスのミッションに比べれば、通常の兵士のほうが容易だったといえる。戦後彼は、国家から名誉勲章を授与されたが、全国民が認めるところだろう。これは後にも先にもないであろう類まれなる戦場のストーリー。

 

 本作の監督である初代マッドマックスが歴史に埋もれた実在の人物、デズモンド・ドスにスポットを当てた意味は深遠であろう。今世界は、ISの狂気をまざまざと見せつけられ、あれが許されるならこれくらいどうってことないという空気が澎湃としてある。暴力は鉄拳のみならず言葉によるそれも含め、身近なものと感じる。そこに共通するのは、強い者が弱い者に対してする卑怯で女々しく、醜悪なる所業。幼児虐待しかり、動物虐待しかり、いじめしかり、オレオレ詐欺しかり、ヤクザの因縁ツケしかり。一対一ではかなわぬものだから、徒党を組みバックをちらつかせ、弱みに付け込んで相手を服させる。別に外見上のヤクザ風情だけがヤクザじゃなく、学生の格好したヤクザやサラリーマン風、おばさんのそれもいる。国会議員とかも。

 

 世の中、げに世知辛く、自分可愛さで汲々としているというのが偽らざる姿だろう。そんな世の風潮を鼻で笑うが如く、真の男らしさとは、腕力に恃んだり、鼻息がどれだけ荒いかでなく、ましてやアルマーニを着こなして、BMWやメルセデスのエンジン音をこれみよがしに響かせることであろうはずもない。それは自身の命の危険さえ顧みずに、ただひたすら人を救うことなんだよとスクリーン上でこれでもかと見せてつけてくれる。

 

 本作は自分ファーストが習い性となった現代人に強烈なアンチテーゼとして迫り、その魂を揺さぶること必定。ただ、実話にしてもちょっと極端すぎてついていけない部分があるのも事実。あと米側からの視点による作品と百も承知でも、日本将兵の描き方は旧態依然たる陳腐さに辟易させられたことも付け加えておく。

月刊ビューポイント8月号発行しました

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月刊ビューポイント8月号の内容は以下のとおり

 

★巻頭グラビア

 台湾の穀倉地帯潤す嘉南大圳

★特集

 1.北朝鮮 制裁の現実

  国連北朝鮮制裁委員会元専門家パネル委員・古川勝久氏に聞く

                         (聞き手・早川俊行

  ・中国の圧力 本物でない/自国企業に明確に伝達せず

  ・トランプ米政権/軍事圧力を外交に転化できず

  ・各国の履行状況/イラン問題に比べ切迫感薄く

  ・決議違反のロシア/国際核機関に北の研究者

 2.香港・中国返還20年

     「一国二制度」の前途 (香港・深川耕治

  ・挫折した中港融合戦略

  ・中央政府の「全面管轄権」宣言

  ・不変の愛国教育路線

★ビル・ガーツの眼

 ・通信傍受や破壊工作の懸念――中国製機器が米国防総省に

 ・中国政府 クシュナー氏に接近

★米保守論壇

 ・ポストIS狙うシーア派 イランとロシアが勢力拡大

 ・止まらぬ大統領のツイート 世界に衝撃と混乱を招く

     (米コラムニスト チャールズ・クラウトハマー

★講演

  天安門事件から28年 新事実明らかに

    戦車による追撃の前に毒ガス散布 方政氏が講演

★ワールド・スコープ

 ・比への浸透図るIS

   イスラム過激派が要所を占拠 (マニラ・福島純一

 ・「強いインド」へ邁進―モディ政権3周年

   アジアの地域大国目指す (池永達夫

 ・欧州で初めて、イスラム教指導者が「反テロ宣言」

   過激主義との違い鮮明に (ウィーン・小川敏

 ・文政権、金正恩氏との会談に意欲

   対北対話モード全開  (ソウル・上田勇実

 ・過激化する反トランプ運動 

   生首人形の動画や暗殺劇 (ワシントン・岩城喜之

 ・アラブ4カ国、カタールに同胞団との断絶要求

   過激派支援で対立表面化 (カイロ・鈴木眞吉

 ・欧州で相次ぐテロ

   実行犯は地元移民出身 (パリ・安倍雅信

★沖縄から

  沖縄離島活性化推進事業を活用

    久高島に野菜工場建設へ(那覇・豊田剛

★持論時論

  ・「企業家ミュージアム」オープン

     宗教思想を経営に生かせ

    市川覚峯(日本経営道協会・一般社団法人企業家ミュージアム代表)

  ・地方行政から憲法改正論

     被害拡大防ぐため緊急事態法不可欠

       斉藤守(千葉県議会議員)

  ・いじめ・自殺撲滅運動

     地域を巻き込み国民運動に

       平林朋紀(「再チャレンジ東京」理事長)

 

その他、国際レーダー/防衛レーダー/論壇時評/メディアウオッチ/ビューポイント/社説 など

 

※月刊ビューポイント1か月無料試読出来ます。お申込みは下記URLをクリック!

http://viewpoint-web.com/otameshi.html          

 

  

「海の正倉院 沖ノ島 よみがえる建国の神々」電子復刻版で登場

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 国連教育科学文化機関(ユネスコ)世界遺産委員会は、7月9日、日本が推薦していた「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」(福岡県)の世界文化遺産登録を決定しました。5月のユネスコ諮問機関の国際記念物遺跡会議(イコモス)による沖ノ島(宗像大社沖津宮)と三つの岩礁のみを登録するのが適当との勧告を覆し、全8資産の一括登録となりました。これを記念して、平成5年(1993)9月に世界日報社から刊行された武藤正行著「海の正倉院 沖ノ島 よみがえる建国の神々」を電子版で復刊いたしました。以下のURLからご購入いただけます。販売価格1200円(税別)、閲覧には専用ビューワ(無料)が必要です。

↓      ↓     ↓     ↓

http://book.vpoint.jp/products/list.php?category_id=13

 

<目次>
まえがき
第一部 海の正倉院 沖ノ島
       ――祭祀遺跡発見のドキュメント――
 
   一、はじめに
       建国神話は「虚構(フィクション)」なのか?
   二、日本のシュリーマンとなって
       津田左右吉学説への疑問
       敗戦――「日本的なもの」の崩壊
       理解者はパリから来た紅毛碧眼のエトランゼ
   三、大和朝廷の関与した沖ノ島祭祀
       玄界灘の島々を調査
       『古事記』『日本書記』に登場する宗像の三女神
       韓国金海へ続く「海のシルクロード」
       「天孫を助け奉りて」の意味すること
   四、ついに実現した沖ノ島調査
       冬の玄海を渡り、単身沖ノ島へ
       反骨の企業家、出光佐三氏との出会い
       禁忌(タブー)破りで覚悟の祈り
   五、「戦後、最高最大」の発見!
       竜宮城さながらの神話の島
       おびただしい祭祀の遺物
       純金の指輪を日本で初めて発掘
       「三種の神器」による祭祀――既に四世紀に存在
   六、神話はフィクションではなかった
       神話の背景に歴史的体験あり
       金銀の島、国宝の島、民族復興の宝島
   七、韓半島から陸のシルクロードへ
       (1)黄金製指輪 (2)唐の三彩
       (3)切子装飾瑠璃碗 (4)金銅製心葉形杏葉

第二部 玄界灘は日韓を結ぶ「紐帯の海」
       ――志登ドルメン遺跡調査によせて――
   一、「玄界灘文化圏」と大陸文明
       九州に関係する三つの文化圏
       海を越えて来る衝撃
   二、日韓両民族の類似点(人類学の視点)
       背丈の高い半島からの渡来人
       指紋、血液型、蒙古斑の類似性
   三、弥生式文化の形成と日本流入(民俗学の視点)
       北韓三八度線以南は「注連縄(しめなわ)文化圏」
       北方ツングース系文化と水稲文化の融合
   四、「原始日本語」の成立(言語学の視点)
       日本にあった母系制の時代
       日本語には南方系言語の要素が強い
       日本語ウヂ(氏)の語源を探る
       政治組織力にまさる北方ツングース系民族
       日本語と韓国語の系統的関係
   五、古代ドルメン文化の時代(考古学の視点)
       ヨーロッパとアジアにまたがる巨石文化
       ドルメンの分布と構造
       韓国と北部九州に共通する碁盤式支石墓
       志登の支石墓群を調査して
       玄界灘を自由に往来していた倭人たち

第三部 楽浪文化は流れて
       ――日本古代国家成立の文化的背景――
   一、楽浪――半島文化の先進地帯
   二、「漢委奴国王」の金印
       日本最古の金石文資料   
       金印偽物説の解消
       海上交通を支配した海人部族・阿曇氏
       志賀島に金印が埋蔵された理由
   三、楽浪文化と古代日本I
       トインビーによる日本文明の位置づけ
       楽浪出土の豪華な遺物群
       悲運の太子、菟道稚郎子(うぢのわきいらつこ)と人物画像鏡
       華麗な装飾壁画のある王塚古墳と珍敷塚古墳
   四、楽浪文化と古代日本Ⅱ
       吉川幸次郎氏と柿本人麿「月の船」
       楽浪文化を受容した縄文以来の国土と人間

結語 日本よ何処へ行く!

 

 

本書まえがき
九州大学名誉教授 文学博士 田村圓澄

 明治十四年(一八八一)刊行の『小学唱歌集』に発表された「蛍の光」は、「筑紫のきわみ、みちのおく」と歌っている。「九州の果て」「奥州の北端」の意味であるが、「中央」である東京の銀座にはガス灯が点り、また鉄道が走っていたが、九州や奥州は「文明開化」の枠の外にあると見られていた。しかし日本資本主義発達の原動力となる八幡製鉄所、そして石炭の供給地である筑豊は九州にあった。日本近代化の重要なエネルギーが、長く「筑紫のきわみ」に求められていたことの歴史的評価がなされていないまま、「蛍の光」は歌い続けられていた。
 

 目を、倭と呼ばれた古代の日本に向けるならば、古代中国の歴史書に初めて倭の「国」の名が記されたのは、『後漢書』の「奴国」であった。建武中元二年(五七)に、倭の奴(な)国の使者が洛陽に赴いて奉貢朝賀し、光武帝から印綬を賜った記事である。江戸時代中期の天明四年(一七八四)に志賀島(福岡市東区)から発見された金印は、奴国王が後漢の光武帝から授けられたものであり、「漢委奴国王」の五文字が刻まれている。いま福岡市博物館に蔵されているが、古代日本の黎明を語る、国際的にも貴重な遺品である。 三世紀の『魏志』東夷伝倭人条、すなわち「魏志倭人伝」において、女王卑弥呼の支配下に位置づけられた奴国の姿がうかがわれるが、奴国は那珂川の流域にあったと考えられ、須玖(すぐ)・岡本(福岡県春日市)は奴国王の居住地であった。ともあれ、中国本土や「韓国」と地理的に近い北部九州が、倭の中心の一つであり、古代中国王朝によってこの事実が認められていた。
 

 六世紀の筑紫君磐井は、筑紫・火(肥)・豊の諸国、すなわち九州の北半分を支配し、ヤマト政権軍と一年半に及ぶ抗戦を続けた。八世紀の藤原広嗣が大宰小弐の職権によって九州一円から兵を集め、聖武政府に対する反乱を起こしたが、抵抗は二ヵ月で終わっている。筑紫君磐井は新羅の法興王と同盟を結び、そして磐井の領有支配地域に住む新羅系・加耶系の渡来人が、磐井を支援した。
 

 渡来系の人びとが住む北部九州には、渡来系の神も鎮座していた。香春(かわら)神社(福岡県田川郡香春町)の辛国息長大姫大目命(からくにおきながおおひめおおまのみこと)は、『豊前国風土記』(逸文)によれば、「昔者(むかし)、新羅の国の神、自ら度(わた)り到来(きた)」りし神であった。宇佐八幡は、『宇佐託宣集』によれば、もとは「辛国」の神である。「辛国」は「韓国」であり、朝鮮半島南部にあった馬韓(百済)、弁韓(加耶)、辰韓(新羅)の三韓を指していた。
 

 いっぽう『古事記』と『日本書紀』に記された九州の神として、阿曇連(あづみのむらじ)等が祭る綿津見(わたつみ)三神(福岡市東区志賀島)と胸肩君(むなかたのきみ)等が祭る胸形(宗像)三神があり、このほかに住吉三神(大阪市住吉区、福岡市博多区住吉)がある。
 

 右の三柱の神は、いずれも「海の神」である。しかし『古事記』と『日本書記』が成立した八世紀の日本において、海神は綿津見・住吉・宗像の三神だけであったとすることはできない。漁撈や海上輸送にたずさわる人びとが住む日本の各地に、海神が祭られていたと考えられる。海神は、海上の安穏、豊漁などについて加護を与える神であった。
 綿津見・住吉・宗像の三海神について注意されるのは、第一に、いずれも古代の筑紫、すなわち福岡県に鎮座していることである。三神はヤマト政権に関連をもつと同時に、朝鮮半島また中国本土との海上交通にかかわっていた氏族の守護神であった、と見るべきであろう。第二に、三神はそれぞれの海上ルートを支配していたと考えられることである。つまり太平洋や大西洋を含む海一般の神ではなく、独自の「海上の道」を確保する豪族の守護神であった。このことは、筑紫の基地から朝鮮半島諸国また中国本土に出航し、またここに帰着する船と乗組員を管理・統率する豪族として、阿曇・津守・宗像の三氏がいたことを語っている。
 

 筑紫で奉祀されている綿津見・住吉・宗像の三神の出現、また鎮座の場所などについて比較すると、注目すべき差異のあることに気付くであろう。
 

 死んだ妻のイザナミの姿を見たイザナギは、驚いて黄泉国(よみのくに)から逃げ出し、筑紫の日向(ひむか)の橘小門(たちばなのをと)の阿波岐原(あはきはら)で禊(みそぎ)をしたという。身についた死の穢れを祓い清めるためであったが、このとき水の中から現れたのが、綿津見三神であり、住吉三神であった。いずれも男神である。
 

 いっぽう粗暴・無道の故に、両親のイザナギ・イザナミの二神から忌避された須佐之男命(すさのをのみこと)は、海の彼方の根国(ねのくに)に行くことを決意し、姉の天照大神に暇乞いをするため高天原を訪れるが、弟の須佐之男命には我が国を奪う邪心ありと推断した天照大神に対し、邪心のないことを証明するため、両神は誓約(うけい)をした。その結果、須佐之男命が吐く息の中からアメノオシホミミなどの五男神が、いっぽう天照大神が吐く息の中から、田心姫(たごりひめ)・湍津姫(たぎつひめ)・市杵嶋姫(いちきしまひめ)の三女神が現れ、須佐之男命の善心が証明されたが、この三女神が宗像三神である。
 

 出現の場所についていえば、綿津見三神と住吉三神は、地上の日向国であるのに対し、宗像三神は高天原であった。しかも宗像三神は天照大神から生まれている。天照大神は宗像三神に対し、「海北道中」に降り、「天孫」を助けると共に、また「天孫」によって祭られるよう命じた。「天孫」とは歴代の天皇を指すであろう。
 

 筑紫に鎮座する宗像神と、ヤマト朝廷との並々ならぬ関係がうかがわれる。
 

 宗像大社の辺津宮(宗像郡玄海町田島)とそれより一二キロ離れた海上の中津宮(同大島村)、辺津宮より五七キロ離れた沖ノ島の三処をつらねる海上の道が「海北道中」である。沖ノ島には沖津宮がある。綿津見三神・住吉三神の場合、境内に三社殿が並び、それぞれに三神が奉祭されているのに対し、宗像三神は海辺と、海上の二つの島に展開した形で鎮座している。
 

 宗像沖ノ島の本格的な学術調査は、昭和二十九年(一九五四)に始まり、昭和四十六年(一九七一)までの十八年間に延べ一〇回行われた。その結果、沖ノ島に四世紀後半から九世紀までの祭祀遺跡二十二ヵ処のあることが確認され、夥しい遺物が発見出土した。絶海の孤島が、「海の正倉院」であることが明らかとなったが、昭和二十九年の第一次の沖ノ島学術調査を企画し、財政面の調達、調査団の組織などに重要な役割を果たしたのが、本書の著者の武藤正行氏である。
 

 宗像沖ノ島の祭祀遺跡調査の全容の報告を第一部とし、韓国と日本を結ぶ「玄界灘文化圏」の構想を第二部とする本書は、四十年前の宗像沖ノ島の発掘調査時の興奮に私どもを誘うと共に、日韓両民族を結ぶ原点について新しい智見を示している。
 

 恰好の時期に、恰好の著者によって完成される本書の上梓を悦ぶものである。
                               (平成五年六月記)

著者略歴
武藤正行(むとうまさゆき)
明治43年、福岡県生まれ。昭和6年、九州帝国大学文学部国史科卒業。戦後、福岡県教育委員会を経て、昭和37年東和大学講師に。同47年、東和大学教授、純真女子短期大学教授、同53年から国士館大学客員教授となる。著書には『日本歴史に流れるもの』『宗像神社と宗像文化』『新しい日本的思惟』など。専攻は日本思想史。

第174回世日クラブ講演会ご案内

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テーマ     

  「北朝鮮危機と

       混迷するトランプ外交」

 

講師:川上高司氏

 

 世日クラブ第174回定期講演会を8月22日(火)に開催いたします。今回は、拓殖大学海外事情研究所所長の川上高司氏を講師に迎え、「北朝鮮危機と混迷するトランプ外交」のテーマとなりました。

 

 北朝鮮の核・ミサイル危機が深刻度を増す中、肝心のトランプ米政権は「ロシアゲート」疑惑などが影響し、明確な外交戦略を打ち出すことができずにいます。

 

 トランプ政権が中国と取引し、中国の影響力の下で核を持った反日統一朝鮮が生まれることは、日本にとって最大の危機だと、川上氏は警鐘を鳴らしています。日本は今、どのような外交・安全保障政策を取るべきなのか、川上氏に語っていただきます。

 

<講師プロフィール>

かわかみ たかし

 1955年熊本県生まれ。大阪大学で博士号取得(国際公共政策)。米フレッチャースクール外交政策分析研究所研究員、ランド研究所客員研究員、財団法人世界平和研究所研究員、防衛庁防衛研究所主任研究官、北陸大学教授などを経て、2005年から拓殖大学教授。13年から同大海外事情研究所所長。米国の外交政策や軍事戦略、日米関係に詳しい。著書に『トランプ後の世界秩序』(東洋経済新報社、共著)、『無極化時代の日米同盟』(ミネルヴァ書房)など多数。

 

【演題】「北朝鮮危機と混迷するトランプ外交」
【講師】川上 高司氏 (拓殖大学海外事情研究所所長)
【日時】平成29年8月22日(火)18:00受付開始、18:30開演
【会場】〒112‐0003 東京都文京区春日1-16-21 文京シビックセンター26階スカイホール
【会場に関する問い合わせ】03-5803-1100(財)文京アカデミー施設管理係
【交通案内】東京メトロ丸の内線、南北線の後楽園駅徒歩3分、都営地下鉄三田線、大江戸線の春日駅徒歩3分、JR中央・総武線の水道橋駅徒歩10分
【参加費】2千円(会員無料)

【主催/後援】世日クラブ/世界日報社、言論人フォーラム

【連絡先】世日クラブ事務局・柏木、電話047(314)5761、FAX047(314)5762、HPはhttp://senichi-club.net


映画「君はひとりじゃない」を観る

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 検視官として、日常的に変死体の現場と向き合うヤヌシュ。妻を亡くしてからというもの、感情まで喪失したかのように淡々と仕事をこなし、楽しみと言えば、三度の食事とウオッカと煙草。どんな料理もおかまいなしに、これでもかとコショーを掛けまくるシーンが印象的だが、日頃の不摂生ぶりはその突き出たお腹が物語る。母の死後、摂食障害を患うようになった娘のオルガとの仲は険悪そのものだ。ただ最近、家の中の不可解というべき現象に合理主義者のヤヌシュは首をひねっていた。

 

 そのうち娘を面倒見切れないと判断したヤヌシュは、オルガを病院に連れて行き入院を目論む。そこで彼女のリハビリを担当することになったのが、セラピストのアンナ。摂食障害の少女を集めて、アンナが指導するセラピーはちょっと独特。実は彼女は数年前に幼い息子を亡くしているのだが、それ以来、霊媒体質となり、故人の声を聴いて遺族に伝えたり、自動書記を行ったりしていた。そんな彼女とヤヌシュ父娘はセラピーを通じて出会うことになったが、やがてアンナはヤヌシュの背後に声ならぬ声を聞くようになる。

 

 ヤヌシュが検視を手掛ける凄惨な事件現場は、舞台である現代ポーランドの殺伐とした世相を表すのか、その深刻さが伝わってくる。誰もが心を失くし、愛されない不平不満が澎湃として、ささいな摩擦でも発火の恐れなしとしないのは旧社会主義国ならではか、はたまたITの進化とそれによる情報の洪水に、木の葉のごとく翻弄される万国共通の病弊か。そこにスピリチュアルなるものを求める動きは、人間の心の発露として自然な成り行きだったろう。

 

 さて、身近な人の死は、残された者に耐えがたい痛みと喪失感をもたらす。本作のタイトル「君はひとりじゃない」とは、劇中のアンナのセリフとしても語られるように、愛する人は、たとえ目には見えなくとも、いつもともにあるというメッセージが込められていよう。ストーリーの流れからいくと、ラストは何となく予想がついたのだが、見事に裏切られた。家族を尊重しつつも、説教調でないところがまたいい。理解不能なエロティックなシーンは自由すぎるキライはあるが…。

映画「ハイドリヒを撃て! 『ナチの野獣』暗殺作戦」を観る

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 「ミュンヘン会談」は、1938年、ドイツ人が多く居住するチェコのズデーテン地方を巡って、英、仏、独の首脳によって行われた。結果は、パシフィストである英のチェンバレン首相によるヒトラーへの宥和策で、同地方を割譲。これが却ってヒトラーの増長を招き、翌年ナチスドイツのポーランド侵攻をもって第二次大戦の火ぶたが切られる。これは長らく歴史の教訓として語られてきたところ。これを現在になぞらえれば、中共や北朝鮮に対する宥和策などあってはならないが、歴史を学ばぬ内外の政治家のいかに多いことか。さて、その間、チェコは自国の領土をめぐる会談に国の代表を送り出せなかったばかりか、以後隣国から自民族保護を口実に介入を受け、ついに国家解体の憂き目となった。

 

 本作の舞台は41年の冬、ナチス統治下のチェコ。その山間に二人の軍人がパラシュートで降り立った。ヨゼフ・ガプチーク(キリアン・マーフィ)とヤン・クビシュ(ジェイ・ドーナン)は英国政府とチェコの亡命政府からのミッションを携えていた。ズバリそれはタイトル通り、「ハイドリヒを撃て!」。ハイドリヒとは、ラインハルト・ハイドリヒ。ドイツ国家保安本部の初代長官として、SSと警察機関を一手に束ね、SSのトップであるヒムラーに次ぐナチスナンバー2の地位にあった。この男がポーランド侵攻後、チェコの総督代理として送り込まれてきたのだ。その端正な顔立ちとは裏腹に、あまりの冷酷さから、「プラハの死刑執行人」とか「金髪の野獣」などと揶揄され恐れられた。

 

 ヨゼフらは、周到に暗殺計画を進めていくが、レジスタンスのメンバーの中からは、これが本当に亡命政府からの指令なのかの疑問も上がる。なるほど、たとえハイドリヒを撃ったとしてもそれでナチスによる占領が終わるわけでも、過酷な統治がなくなるわけでもない。否、却って激しい報復を招くであろう。事実そうなってしまうのだが、それをわかってなお決行しなければならない理由は何か。最後に教会に立てこもった実行犯の6名はそれぞれに胸に去来するものがあったろう。だが果たしてそれは占領下の同胞と共有できた価値観だったのか。幾分叙事詩的ながら、劇中ヨゼフが叫ぶ、”我々は誇り高きチェコ人だ”がすべての答えなのかもしれない。

 

 四方を海に囲まれ、日ごろ国境を意識することはなく、民族、宗教紛争の歴史もないわが日本人には、にわかには実感が湧くものではないが、ド迫力の戦闘シーンもさることながら、国家とは?、民族とは?をあらためて考えさせられる深く重厚な作品。

第174回世日クラブ定期講演会が開催されました。

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「北の核危機に備えよ」
拓殖大学海外事情研究所所長 川上高司氏が講演

 

 世界日報の読者でつくる世日クラブ(会長=近藤讓良・近藤プランニングス代表取締役)の定期講演会が22日、都内で開かれ、拓殖大学海外事情研究所所長の川上高司氏が「北朝鮮危機と混迷するトランプ外交」をテーマに講演した。


 川上氏は、北朝鮮には核放棄の意志はないとし、核問題の解決には「ハードランディングとソフトランディングの二つのシナリオしかない。今、それがどちらに転ぶかという決定的な時期だ」と指摘。米軍が武力攻撃に踏み切るハードランディングについて、日本の在日米軍基地や主要都市、原発などをターゲットに「北朝鮮から間違いなくミサイルが飛んでくる」として、それを見越して備える必要があると強調した。

 一方、ソフトランディングの場合、米朝が国交を回復し、国連軍の解体や在韓米軍が撤退する可能性に言及し、「最悪のシナリオは核を持ち、しかも中国の影響下にある反日朝鮮半島が出来上がる」ことだと警鐘を鳴らした。

 米軍が武力行使に踏み切るレッドラインついては、「6回目の核実験とグアム沖へのミサイル発射。これを越えたときに米国は堂々とハードランディングできる。しかしながらこれはトランプ(大統領)が決める」とした。

 また、バージニア州シャーロッツビルで白人至上主義を掲げる団体と反対派が衝突した事件について、「米国の危機だ」と強調。スティーブ・バノン首席戦略官の更迭による支持者の離反や経済界の政権離れなどで追い詰められたトランプ氏が、国民の目を海外に向けさせるため「北朝鮮を攻撃する可能性が高まった」と指摘した。

 さらに、15年後を見据えた日本の戦略として、「自主防衛を考えていかないといけないところにきている」と指摘し、米国に対しては「少なくとも核を持ち込むように、というところまでは言わなくてはいけない」と訴えた。

 講演に先立ち、同クラブの近藤会長は「日本は独立国として防衛、エネルギー、食料は自給自足できるように努力しないといけない」と述べた。

第37回全国教育問題協議会教育研究大会に参加しました

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 全国教育問題協議会(全教協)は、昭和52年に設立され、教育問題に関する研究、提言などを行ってきた民間組織で、代表は中尾建三理事長。「美しい日本人の心を育む国づくりをめざして!!~失われた日本人の誇りをとりもどす教育を~」というテーマで、8月19日(土)に自民党本部の大ホールにおいて開催されました。

 

 

 まず第一部は有村治子元少子化担当大臣が、「教育は国民性をつくる礎」と題して基調講演をおこないました。そのなかで特に印象的だったのは、唱歌「蛍の光」を取り上げ、これが卒業式などで久しく歌われなくなったことを紹介。そして、1番、2番はかつて卒業式で歌われてきたので馴染み深いが、この歌には幻の3番、4番が存在していて、歌ったことがある人は稀ではないかと投げかけた。

 

  有村治子参議院議員

 

三番の歌詞は

 「つくしのきわみ、みちのおく、うみやまとおく、へだつとも、そのまごころは、へだてなく、ひとつにつくせ、くにのため」(九州の端や東北の奥まで、海や山々によって遠く離れていても、真心はただひとつにして互いに国の発展の為に尽くそう)

 

四番は、

 「千島の奥も、おきなわも、やしまのうちの、まもりなり。いたらんくにに、いさおしく、つとめよわがせ、つつがなく」(千島列島の奥も沖縄も、日本の国土の守りだ。どこの地に赴こうとも、日本各地それぞれの地域で、我が友よ、我が友よ、我が兄弟と、どうか無事にお元気で、勇気を持って任にあたり、務めを果たしていただきたい)

 

 本歌が作られたのは、明治10年初頭だそうで、幕末から明治にかけての激動期にあたり、近代国家建設を急がなければ列強に飲み込まれてしまうという危機感が漂った時代背景があった。戦後GHQによって、この3、4番が削除されたのだという。最後に有村氏は領土問題について言及し、かつて北方領土、竹島、尖閣諸島が教科書に直接触れられず、欄外に記載されていたことを指摘。有村氏は初当選後、初めての予算委員会で、北方領土問題を取り上げて、時の小泉政権を問いただしたのだそう。なお、みずからの領土を守るために平時にできる最大の安全保障は、領土に思いをいたす国民を増やすことだと力説。さらに領土の一部を失って黙っている国民は、領土のすべてを失う危険を負う」というドイツのイエーリングの言葉を紹介し、日本の領土がどこからどこまでなのかを教えずして教育足りうるかと訴えた。

 

 第二部は4名の識者によるパネルディスカッション

 

全日本教職員連盟委員長・郡司隆史氏

 

 全日教連は今年度、福岡教育連盟、大分県公立高等学校職員組合の加盟によって全国に34団体をもつ組織に拡大したこと披露。そのうえで、学校現場での実情として、教員のもっとも優先されるべき授業やそのための教材研究や学習物の評価が後回しになっている状況を報告。その理由として、先生方が生徒指導や各種会議、保護者対応などで手が回らなくなっている窮状を明かし、教育現場の整備が急務と訴えた。

 

元武蔵野大学教授、全教協顧問・杉原誠四郎氏

 

 昨年、教科書会社が検定中の小中学校の教科書を教員らに見せていた問題で、公正取引委員会が9社に対し、独占禁止法違反の疑いで警告したことを取り上げ、その対象になったのはほとんどが教員であったことが判明したことを受け、このことからも教科書採択は実態として、教員団体(教員)が行っていることを指摘。加えて、本来は教育委員会がこういう教科書が欲しいと事前に明示しておくべきで、そうすれば、教科書会社はそれに合わせた教科書をつくるはずだが、現実は教員(自虐教員)に合わせて作られている。教科書会社が元々自虐的なのではなく、自虐的なものが売れるからそういうものを作るのだとしてその改善を訴えた。

 

全教協副理事長・恒崎賢仁氏

 

 日教組の組織率は年々下がってきているが、その影響力がそれにつれて下がっているかといえば、そうではない。日教組教育の影響を受けた二世、三世がマスコミや教育界に多く存在しており、今まさに憲法改正や安全保障が注目される中で、日本の大問題だといえるとした。

 

参議院議員・山田宏氏

 

 かつて会田雄二氏が、昭和30年代に卒業した京大の学生に対して講演した内容を紹介。 「君たちがいずれ日本のリーダーになるだろう。その時の日本が一番心配だ。なぜなら、君たちが、人間として土台となる大事な教育を日本の敗戦によって、すっかり骨抜きにされているからだ。この教育を失ったために君らがリーダーになったとき、おそらく日本は浮遊するであろう」というもので、その失った教育とは、①宗教心の大切さ ②道徳 ③日本の歴史への誇りの3つであり、これを復活させることが日本の再生につながると力説した。

 

コーディネーター・小林正氏(元参議院議員・全教協顧問)

 

 民主主義を成功させる基本的条件は何かについて、「ウェル・インフォームド・パブリック」という言葉を紹介。これはより良き政策情報を知り得て、賢明な政治選択ができる有権者の存在が民主主義成功のカギということ。有権者が情報を得る手段は日本ではテレビ、新聞、ネットであるけれども、大方日常生活においては、テレビと新聞が占める。そのテレビと新聞が昨年来、「モリカケ国会」で、報道番組やバラエティ番組などを通して、連日、それを”忖度”と”ご意向”として垂れ流したことを非難。安倍内閣は第一次の時から一貫して、「決める政治」を行ったきたと評価。それをマスコミは安倍1強と称して強権政治が行われているがごとき印象を与えている。果たしてこれでいいのかと会場に投げかけた。

 

 なお、会場からの質問で、山田宏氏に対して、杉並区長時代に推進した子宮頸がんワクチンの被害について、被害者に対して責任を問う内容に、その責任を深く痛感し、お詫びのしようがないとその場で深く頭を下げて謝罪した。

 

 開会行事では、来賓として、文部科学政務官宮川典子議員などが挨拶し、祝電披露では、安倍晋三総理と林芳正文部科学大臣の祝辞が読み上げられた。

月刊ビューポイント9月号発行しました

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月刊ビューポイント9月号内容は以下のとおり

 

★巻頭グラビア

  分断の聖地、ヘブロン旧市街

 

★李登輝台湾元総統インタビュー

  日台が連携し、一帯一路に対峙

 

★トランプ外交とアジア安全保障

    川上高司(拓殖大学海外事情研究所所長)に聞く

 

★南シナ海 強まる中国支配  ―安保専門家に聞く

  ・香田洋二(元自衛艦隊司令官)

     北危機に隠れ着々基地化

  ・磯村順二郎(米ハドソン研究所上級研究員)

     明確な戦略ない米政権

                     (聞き手=ワシントン・岩城喜之)

★コリアから

  ・韓国徴用工像、政権交代で設置拍車

     8月ソウル、来年平壌でも

  ・慰安婦碑書き換えで争う構え

     奥茂治氏 朝日謝罪文を証拠提出

                       (上田勇実)

★半数以上が「赤旗」など共産系

    岡山県庁 政党機関紙の購読で偏り

 

★ USAから

  ・米軍、無償で兵士の性転換手術

    LGBT配慮、前政権が導入/医療費増、戦力にいわ寄せも

  ・同性婚ケーキ作り拒否は差別か

    米連邦最高裁が審理へ/「文化戦争」の潮流を左右

                            (早川俊行)

 

★ビル・ガーツの眼(ワシントンフリービーコン)

  ・北の新型ICBM、中国が弾頭技術を提供か

  ・米国内の中国スパイ2万5千人、中国人実業家語る

 

★アメリカ保守論壇チャールズ・クラウトハマー

  ・情勢一変させた北ICBM 

     米国締め出し狙う中露

  ・選挙めぐりロシア側と面会

     トランプ氏長男がメール公開

★インサイト2017

  「マフィア化」する習政権

     劉暁波氏死去は「謀殺」  石 平

 

★ワールド・スコープ

  ・就任から1年、比大統領の依然高い支持率 

    終わり見えぬ麻薬戦争 (マニラ・福島純一)

  ・英シンクタンクが報告書 

    英イスラム過激派に流れるサウジの資金

                    (カイロ・鈴木眞吉)

  ・中露、戦略パートナー関係を強化

    アジアでの米影響力拡大に対抗

                    (モスクワ支局)

  ・韓国保守2党、立て直しに苦戦

    革新委発足も「極右」批判 (ソウル・上田勇実)

  ・トランプ米政権半年

    低支持率ながら強固な基盤 

                    (ワシントン・岩城喜之)

 

★沖縄から

  ・那覇市議選は翁長知事派が過半数割れ

    3市に続き地元でも敗北 

  ・那覇駐屯地で大規模震災想定訓練

    陸自と県が初共催  (那覇・豊田剛)

★持論時論

  ・七夕を世界的な行事に

    みんなの希望・夢が集まる日

        小磯卓也(一般社団法人七夕協会代表理事)

  ・モディ政権3年の日印

    インド洋進出著しい中国に対抗

        岡本幸治(大阪国際大学名誉教授)

  ・モンゴル帝国の復活狙う習政権

    日印強化で中国牽制を

        ペマ・ギャルポ(拓殖大学国際日本文化研究所教授)

★防衛レーダー

  現実乖離の共産党の主張 (濱口和久

 

★国際レーダー

  日本の人種差別は減少

     反ヘイト口実の言論圧迫が心配 (山田寛

 

★教育

  日本薬物対策協会が国連「撲滅デー」にイベント 

    「薬物の真実」伝え、友人救おう  (森田政策)

 

その他、論壇時評/メディアウオッチ/ビューポイント/社説 など

 

※月刊ビューポイント1か月無料試読出来ます。お申込みは下記URLをクリック!

http://viewpoint-web.com/otameshi.html          

 

 

 

 

 

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