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「今こそ原子力推進に舵を切れ」との勇気ある特集を組んだWEDGE9月号に拍手

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WEDGE 2013年9月号 今こそ原子力推進に舵を切れ/作者不明

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 特集の冒頭、「言いにくいことでもはっきり言いたい。それもメディアの一つの使命だと考えるからだ。」と言い、自民党さえ原発の再稼動は容認するものの、原子力の有用性や、その積極的な活用には慎重な姿勢である現状に鑑み、「民主党政権がとってきたエネルギー政策を棚卸しし、原子力技術と放射能の現実と合わせ、冷静に決断する必要がある。」とする。

第一章 民主党のエネルギー政策を棚卸しする

第二章 なぜ原子力発電を推進すべきなのか

第三章 原子力技術はコントロール可能

第四章 1msvにこだわれば別のリスクを招く

 すべて傾聴すべきレポートで、ぜひ手にとって腑に落とし込まれたい。また第一章で原賠法(原子力損害の賠償に関する法律)に触れている。

 原賠法の第三条一項に「原子炉の運転等の際、当該原子炉の運転等により原子力損害を与えたときは、当該原子炉の運転等に係る原子力事業者がその損害を賠償する責めに任ずる」という原子力損害に関して、故意か過失を問わない“無過失責任”を規定したあとに、「ただし、その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によって生じたときは、この限りでない。」という免責規定の但し書きがあり、この条文を素直に読めば、どう考えても今回の大震災は“異常に巨大な天災地変”に当たるし、よって、この免責規定が適用され、最初から国が全面に出ておれば、現状のような混乱は避けえただろう。(それでも女川原発は無傷だったし、地域住民の避難所にもなった。福島第一原発で悔やんでも悔やみきれない大チョンボはひとえに、非常用電源が地下にあり、水没したこと。この一点に尽きる。)しかるに時の菅政権は、これを適用せず、事故の責任を東京電力に押し付け、自ら数々の不手際をやらかし、混乱に拍車をかけた。これが当時違法献金問題で風前の灯だった菅政権の反転攻勢に利用されたとすれば許しがたい。

 この原賠法について、井上薫著「原発賠償の行方」(新潮新書)が詳しい。その中で、井上氏は、明治24年の「大津事件」(来日中のロシア皇太子ニコライを大津市の巡査が斬りつけ怪我を負わす。ロシアの報復を恐れた時の明治政府が、大審院院長(現最高裁判所長官)である児島惟謙に「死刑にしろ」と圧力をかけるも児島がこれを拒否し、犯人に無期懲役を言い渡したという事件)を引きながら、現在の日本が本当に法治国家なのか、あるいは三権分立を大前提とする民主主義国家なのかと憤り、それは原発事故被害者に対しても及ぶのだ。被災者としては耳が痛いだろうが、もう一回原点に帰って考えてみる必要がある。さらに井上氏はマスコミについて、「そういう政府の恣意的な権力の行使が現に行われていることを報じておきながら、『それが日本国憲法の定めた国民主権の原理か!』とか、『三権分立という根本原理からして重大な問題であり、こればかりは黙って見過ごすことはできない!』といった論調はどの新聞からも伝わってこないどころか、国民がその点について気づくのを邪魔しているのではないかと思うほどの怠慢です。これはマスコミが本来の責任を果たしていない証拠です。」と断罪している。本書はとかく感情に流されがちな福島第一原発事故の賠償をめぐる法律問題を考える上で必読書といえる。

 さて、WEDGEだが、「パンドラの箱」という映画を手がけたロバート・ストーン監督へのインタビュー「なぜ環境保護派が原子力を支持するのか」の中の重要な指摘を拾って紹介したい。

「WHO(世界保健機構)とUNSCEAR(原子放射線の影響に関する国連科学委員会)は原爆が投下された広島と長崎で生き残った人々の健康状態を、およそ70年に亘り調査し、福島での放射線放出による被曝によって健康上の悪影響を受けた人はおらず、また今後についても、何らかの健康被害が認められることは非常に考えにくいと結論付けました」

「反核グループは、チェルノブイリについても同様の主張を展開しました。100万人以上の人々が悲劇的な災害のために命を奪われた、と言い募ったのです。国連によって行われた最高レベルの疫学的研究が、チェルノブイリ原発事故が直接の原因で亡くなったのは、長い年月を経た後の今日でさえも、たった56人であったと指摘しているにもかかわらずです!」

「我々は、福島の非難指示区域内とその周辺で測定しました。(中略)わずかな数のホットスポットを除けば、その線量は人が身をさらしても健康を脅かすレベルではありません。」

「メディアは恐怖心を煽ることで人々の注目を集め、視聴率をたたき出し、繁盛しています。何かが『実はそれほど危険ではない』と伝えることは、ニュースではないのです。」

「再生可能エネルギーが、それ単独では決して化石燃料に代わることができず、化石燃料を燃やし続けることが我々を恐ろしいスピードで気候崩壊へと向かわせていることに気づいたとき、私は原子力エネルギーについて考えを変えました。」

「国連の最も信頼できる科学的見識によると、人の死や放射能による発病が起こったとされている唯一の事故はチェルノブイリです。(中略)つまり、概して原子力には、稼動から30年以上が経過した原子炉においてさえ、むしろ注目に値するほどの安全な稼動実績がある」

「放射性廃棄物の問題は、重大なものではありません。放射性廃棄物の量は少なく、そして、化石燃料の排出物とは異なり、それは全て貯蔵され、所在が確認できます。(管理できます)この放射性廃棄物が数千年の間も放射性を保持する間、それらは次世代原子炉の燃料としてリサイクルされ、再利用することができます。この再利用のプロセスが完全に終わった後に残される廃棄物は、たった2~3百年の放射性を有するだけです。つまり、これはまったく技術的な課題でも、道徳上の問題でもありません。単に政治の問題なのです。もし、あなたが将来の世代の幸福や健康を気にかけるならば、あなたの一番の懸案は、可及的速やかに二酸化炭素の排出を減らすことでなくてはなりません。二酸化炭素は、我々が子孫へ遺している有害な遺産です。それに比べ、放射性廃棄物はとるに足らず、簡単に処理できるのです。」

 CO2が地球温暖化の原因だとする説を否定する向きもありますが、産業革命以来、自然の処理能力を越えてCO2を排出し続けているのは事実でしょうし、何より化石燃料を使うことによる大気汚染で、毎年300万人が亡くなっているという痛ましい現実から目を逸らさず、その解決に向けて真剣に考える時であり、その中核に原子力が来なければならないことは間違いないといえるでしょう。


原発賠償の行方 (新潮新書)/新潮社

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